2018年5月25日に発売されたドコモの格安スマホシリーズ「docomo with」割引の対象となる、富士通の新型モデル arrows Be(アローズビー) F-04Kを購入し、同じくドコモの夏モデルスマホを片っ端から使い比べて感じた、F-04Kの人気の理由を分析してみます。

F-04Kはドコモの公式ウェブサイト「ドコモオンラインショップ」上で、2018年8月13日~8月19日の週間売れ筋ランキングで2位、2018年7月の月間ランキングで3位に入っています。

2018年夏モデルの新機種に限定して考えると、発売されたばかりのソニーのトップモデル Xperia XZ2 Premium SO-04K(実機レビューはこちら)に次ぐ人気モデルになりました。

ドコモでは新機種のハイスペックモデルに人気が偏ることのほうが多い中で、性能を抑えた低価格スマホのarrows Be F-04Kがなぜこんなに人気なるのか不思議に感じる人も居るかもしれません。少なくとも、私は不思議に感じました。

ドコモの夏モデルではサムスンの新モデル Galaxy S9/Galaxy S9+、世界最高峰のカメラスマホ P20 Pro HW-01K、同じdocomo with対象機種のLG Style L-03Kなどの世界的には人気があるライバルモデルが多数あるのに、なぜ発売から少し時間も経過したF-04Kが上位に入り続けるのか?という疑問を考えていきます。

旧機種との比較・スペックや価格情報、ベンチマークテスト結果など一般的な実機レビューを見たい人はこちら→「ドコモウィズ 第2世代arrows Be F-04Kの進化点・比較まとめ

富士通の「メイド・イン・ジャパン」が受けた?

Galaxy、P20、LGのスマホはすべて海外メーカーの端末であり、arrows Be F-04Kが国内メーカーだから人気なのでしょうか。

富士通(現在の社名は正確には「富士通コネクテッドテクノロジー株式会社」)のスマートフォンは国内で設計・開発・製造・修理までをすべて行うことで品質を高めた端末としてアピールしています。

F-04Kも日本の工場で耐久試験や製造チェックをされてから出荷されているそうです(上記写真は実際に富士通のスマホ製造工場で撮影したもの)。

週間ランキングのトップ5はF-04Kのほかは、すべてソニーのXperiaです。ドコモでは日本メーカー製品が強いというのは一つの理由ではあると思われますが、シャープのAQUOS sense SH-01Kは6位・AQUOS R2 SH-03Kは10位となり、夏モデルではシャープは苦戦中。

また、同じ富士通スマホで2017年冬に発売されたarrows NX F-01Kは2018年8月3日に機種変更値下げが実施されたにも関わらず、F-01Kは今週もランキング圏外です。

arrows Be F-04Kが「日本製で安心である」というのは魅力の一つであるにしても、それだけではない人気の理由があるはずです。

値段の安さは最大のPRポイントか

富士通のarrows Beは初代 F-05J,第二世代 F-04Kともに「docomo with」対象のスマートフォンです。

arrows Be F-04Kは昨年モデルのF-05Jよりも大きくスペックアップを行った影響で少し販売価格は上がっています。しかし、機種変更の実質負担額は0円以下(docomo with割引を月サポと同様に24回の値引きとして考慮した場合)という破格で提供されています。

価格の安さは、もうそれだけで購入の動機になり得えます。

ドコモの売上ランキングで上位に入っているモデルを分析すると、

・発売されたばかりの新機種で話題性があるスマホ
・機種変更価格が下げられて、お買い得になったスマホ
・価格設定自体が安いスマホのdocomo with対象の格安スマホ

この3種類に分類されます。arrows Be F-04Kの場合は3番めの「docomo withだから」ということになります。

人気ランキング 機種名 機種変更価格*
1位 Xperia XZ1
SO-01K
20,088円
2位 arrows Be
F-04K
マイナス5,184円
(docomo with対象)
3位 Xperia XZ1
Compact SO-02K
15,552円
4位 Xperia XZ2
Compact SO-05K
32,400円
5位 Xperia XZ2
Premium SO-04K
67,392円
6位 AQUOS sense
SH-01K
マイナス8,424円
(docomo with対象)
7位 Xperia XZ2 SO-03K 47,952円
8位 LG Style L-03K 1,296円
(docomo with対象)
9位 Galaxy S9+ SC-03K 64,800円
10位 AQUOS R2 SH-03K 49,248円

*スマホ(Xi→Xi)機種変更時の月々サポート、またはdocomo with割引を2年間適用した場合の実質負担額(税込)。実機レビューを見たい人は機種名のリンク先を参照。

1位・3位のXperia XZ1シリーズが「値下げによる人気」であり、2・4・5・7~10位の7台が「2018年夏モデルの新機種で話題」であり、2・6・7位の3機種が「docomo withの格安スマホ」という分類です。

arrows Be F-04Kは発売から2ヶ月以上が経過しているため「話題性」はやや弱くなっていますが、「格安スマホ」としてのポジションを維持しています。同じ「話題性」+「格安スマホ」の属性を持つLG Style L-03Kもあります。しかしLGは日本国内のスマホではあまりメジャーではないため、「安心感」という観点からF-04Kのほうが人気が上になっていると見られます。

最新機種の新モデルは発売直後は人気ランキングのトップに来ることもあります。しかし、その後に高い順位を保ち続けられるスマホは「納得できる機種変更の安さ・お得さ」を兼ね備えているモデルになる傾向があります。

2年毎に買い換える必要がない、円熟したスマホ性能


新しいスマホが出るたびに買い替え・買い増しを行う一部の特殊な人間を除き、携帯電話/スマホを買い換える頻度は、スマートフォン全体の性能・品質の向上に伴い、長くなっているよく聞きます。

物理的な破損や摩耗・劣化を除けば、過去の携帯・スマホ機種が「2年も経てば時代遅れとなり、使い物にならない」という印象であったのに対し、今では2年以上前のスマホでも普通に使い続けられる高性能・高品質なモデルが増えました。

管理人の場合も、最新機種を次から次へと試すために購入する一方で、普段使いのモデルとしてはGalaxy S7 edge(2016年夏モデル)やiPhone 7(2016年秋モデル)も利用し続けています。

確かに最新のハイエンドモデルにはそれぞれ驚嘆するほどの進化した性能や、ちょっと便利になる新しい機能が付与されるモデルもあります。しかし、それらは「無くてもなんとかなる機能」も多く、「多くのユーザーが必要とする機能」はarrows Beのような低価格スマホにも採用できる時代になっています。

かつてはハイスペックモデル・新機種だけに採用されていた機能が、格安スマホでも使えるほどに、スマホ業界は円熟してきています。その傾向はarrows Beを見ても明らかです。


arrows Be F-04Kには、2017年モデルの上位機種 F-01Kで初めて採用された「Exlider(エクスライダー)」が搭載されています。エクスライダーはディスプレイパネルをタッチすることなく画面をスクロールしたり拡大することが出来る特殊なコントローラー。そして、このボタンには指紋認証センサーも内蔵されています。

今やほとんどのスマホで当たり前のように使える指紋認証機能も、古い格安スマホであるarrows Be F-05Jには搭載できませんでした。しかし、今や「指紋認証・生体認証がないスマホ」はあまりにも常識的で標準的な機能として広く普及しました。もしF-04Kに指紋認証・エクスライダーが無かったら、きっとこれほどまでに売れることは無かったでしょう。

エクスライダーは2017年モデルの上位モデルF-01Kのために開発された機能のはずですが、低コストで作らなければならないdocomo withモデルにも流用出来たことがヒットの理由の一つだと感じられました。

また、カメラについてもarrows F-04Kは大きく進化しています。


F-04Kのカメラ性能を他社の最高峰モデル(Xperia XZ2 Premium, Galaxy S9+, P20 Pro)と比べてしまうと平凡と言わざるを得ない画質になってしまうのですが、1~2年くらい前の高性能モデル並のクオリティならば、最新の低価格スマホであるF-04Kでも良い勝負が出来るようになっています。

F-04Kのカメラは富士通スマホでは初めて「一眼レフ技術を採用」というフレーズで売り出されています。


従来のモデルより感度が高いセンサーを使うことで、暗い場所でも綺麗な写真が撮れるようになり、高速AFにも対応しました(F-04Kで撮影されたメーカーサンプル画像はこちら)。これらも過去のハイエンドモデルならば搭載していた機能ですが、F-04Kのようなエントリーモデルでも低コストで導入できるように時代が変わってきたということなのでしょう。

そして、docomo withとしての特徴である「2年以上使っても割引が続く」というお手軽さがF-04Kにはあります。

他の本体定価が10万円を超えるような最新スマートフォンの場合、機種代金の割引に相当する「月々サポート」が設定されており、毎月の値引き額はdocomo with(月額1620円)より大きくなることがほとんどです。

しかし、月々サポートは2年間(24ヶ月)の適用が終わると、割引を自動で継続することが出来ません。月々サポートが切れるごとに次の機種へ機種変更を続けていくことが苦にならないのならば良いですが、新しい機種へ買い換える必要性を感じない・使い方が変わってしまうのが億劫だというユーザーも多いはず。


ドコモで25ヶ月目以降も継続する割引を受けることが出来るのは、「docomo with」の対象となる比較的安価なモデルに限定されており、その中でarrows Be F-04Kは2018年8月時点において人気ナンバーワンです。

ずっと使い続けられる安心と価格の安さがF-04Kを多くの人が選ぶ理由の大部分を占めていると、実際にF-04Kを購入して強く感じられました。

F-04Kのもの足りない部分

ここまでは「F-04Kが人気になる理由」として、F-04Kの優れた部分・受け入れられやすい部分を挙げてきましたので、続いて逆に「もの足りないな」と感じた部分についても書いてみましょう。「価格相応」と言ってしまえばそれまでなのですが、新機種や上位モデルなら使える機能がF-04Kには無いポイントも当然たくさんあります。

F-04Kに採用されているCPU SDM450は、エントリー~ミドルスペック向けのチップであり、「高性能」とまでは言えない処理能力のレベルです。ゲームアプリで遊べないわけではありませんが、最新~1・2年くらい前のハイエンドモデル(Snapdragon 845,835,820シリーズ)に比べると、明らかに処理能力で劣ります。負荷の高いゲームアプリではアニメーションの動きが不自然になることがありました。

ゲームを快適に遊びたい人にはF-04Kを始めとするdocomo withスマートフォンは向きません。

先程は「F-04Kは一眼レフ技術を取り入れてカメラ性能がアップしたことが魅力」とも書きました。しかし、他社のカメラ性能に力を入れた最新ハイエンドモデルには、画質・機能ともにF-04Kでは歯が立たないスマホが存在します。

ドコモなら最新モデル P20 Pro HW-01Kは20メガ+40メガ+8メガのトリプルカメラを搭載した、カメラに特化したモンスタースマートフォンを選ぶことも出来ます。スマホカメラをそこまで重視しない人にならばF-04Kのカメラは十分に綺麗なものが撮れると言える水準になっているものの、最上位のカメラスマホを体験した後だと、F-04Kの写真の仕上がりは平凡に感じてしまいました(HW-01Kの写真作例は「ドコモP20Pro(HW-01K)と50万円のデジカメでズーム撮影・夜景撮影勝負」を参照)。

arrows Be F-04Kのストレージ(本体データ保存容量)は32GBになっています。旧モデルのF-05Jは16GBであったため、2倍にアップして大容量化されたものの、高額なスマートフォンなら64GBが最低レベルになってきています。

写真やアプリをたくさん保存したい人はmicro SDXCカードで400GBまで外部ストレージを使うことは出来ますので不足して困ることはめ滅多に無いと思われますが、ハイエンドモデルなら64GB, 128GB, 256GBといったモデルも一般的になってきている現代で、32GBという容量は「格安スマホ相応」といった印象です。

富士通はハイエンドより「普及モデル」を目指すべき?

現在の富士通のスマートフォン部門は「富士通コネクテッドテクノロジー株式会社(FCNT)」および「ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社」という、富士通の新子会社が担当しています。過去の富士通の携帯事業(FCNT)/富士通周辺機株式会社は「ポラリス・キャピタル・グループ株式会社」へ株式譲渡することにより、再編成が行われた状態です。

少し前には「富士通は携帯事業から撤退する」という噂もあったように、近年では携帯事業において厳しい状況にあったのは間違いないでしょう。

富士通のスマートフォンは今後も「arrowsブランド」として継承されていくと見られます。かつてはarrowsもソニーの「Xperia」、シャープの「AQUOS」といったライバル会社のスマホと並んでハイエンドモデルを出していた時期もありますが、ここ2年程度は最高性能のスマホを出すことが無くなりました。

具体的にいうと、2017年冬に発売されたarrows NX F-01Kは”ハイスペック”ではありましたが、同時期の他社スマホが採用したSnapdragon 835ではなく、ワンランク落としたSnapdragon 660(SDM660)を使っています。さらに1世代前の arrows NX F-01JもSnaspdragon 820ではなく Snapdragon 625を、その前のF-02HもハイエンドではないSnapdragon 808を採用しました。

ハイエンドのチップは性能が高い反面、導入コストや発熱制御対策に苦労するメーカーも多くなったり、「ハイエンドモデル」として出すからにはトレンドを追いかけた似たようなデザイン・性能のスマホばかりになりがちです。


(流行の”ノッチ”デザインスマホが多い)

ディスプレイに「凹」のようなへこみがあるノッチデザインのスマホでは、ボディの広い領域をディスプレイとして利用できるというメリットはありますが、いずれもiPhone Xのパクり商品のようになってしまいました。

トレンドでカッコいいデザインのスマホも良いのですが、arrows Be F-04Kは従来どおりのデザインを維持しています。


今や非常に珍しくなった、伸びるアンテナ(ワンセグ用)まで内蔵しています。

他社の最新鋭のスマートフォンはトレンドを追いかけ、常に最新技術と最高の性能を提供し続けないとライバルに勝てず、少しでも他機種・さらに新機種に機能面で負けてしまうと、話題にも上がらなくなってしまいます。先述のドコモの売れ筋ランキングを見ても、最高峰モデルも発売直後は人気がありますが、それよりも今は「安いこと・お買い得感があること」のほうが重視される傾向があります。

F-04Kの見た目はとても普通です。5.0インチであるため片手で使いづらいほど大きくはないものの、コンパクトモデルと言えるほど小さくもなく、歯に衣着せず言えば「野暮ったい」です。頑丈さを維持するためか、高性能なインカメラや指紋認証センサーがあるわけでもないのに、ディスプレイ上下の余白が広く、旧態依然としたデザインのままです。

低価格なスマホであることを前提とすれば十分なクオリティだと個人的には感じますが、最新の近未来感のある他社スマホよりも新鮮さ・斬新さをarrows Beに抱く人は稀でしょう。

最新のハイエンドモデルが欲しい人が居る一方で、確実に「ある程度の性能があれば安いほうが良い」というユーザーの需要にうまくハマったのがarrows Be F-04Kの価格・性能だったと、F-04Kを買って使ってみたことで実感出来ました。

ここから富士通のarrowsスマホが他社端末のようにハイエンド化・薄型/大画面モデルを目指して、勝負できるようになるとはハッキリ言って思えません。無理をするとソニーのように携帯事業が足を引っ張るような形になってしまうでしょう(すでに散々足を引っ張った結果、2018年に子会社化・譲渡・再編成することになったのでしょうから)。

ソニーのXperiaシリーズは一定の需要はありつつも、2018年8月の売れ筋ランキングを見れば明らかなように、「新機種の話題性<値下げされたお得感」を反映した結果、新機種のXZ2シリーズよりも型落ちしたXZ1が上位を占めているのが現状です。

arrowsスマホは今の「頑丈」・「安心」・「便利」、そして買いやすい端末に一点集中して勝負することが生き残る道なのかな、と。

(F-04Kはハンドソープで丸洗いも出来る)

まもなくAppleから新型機種の発売も予定されていますが、現状で聞こえてくる噂では昨年のiPhone Xを少し仕様変更・大型化したようなマイナーチェンジしか行われず、かつ価格は従来機種を上回る高額なモデルになると言います。

もちろん性能面でF-04KがiPhone 9やiPhone XSを超えることは天地がひっくり返っても無い(耐久面のみでなら勝てそうです)でしょう。しかし、これから人気になるのは新機種の発売に合わせて値下げが予想される現行のiPhone 8/8 Plus, iPhone Xや、Xperia XZ1シリーズのような値下げされたモデル、arrows Be F-04Kのような低価格で高コスパな機種になるのかもしれません。

☆「ドコモ公式HP arrows  Be F-04Kの最新情報をチェックする」/在庫なし

2019年夏、新機種 arrows Be3登場

2019年6月時点で、本ページで紹介している第二世代arrows Be F-04Kはドコモ公式サイトでも在庫がなく、購入できなくなりました。しかし、このarrows Be F-04Kの長所を残し、さらにグレードアップした「arrows Be3 F-02L」がドコモから発売されます。

 

2019年夏モデルのarrows Be3 F-02Lは、とにかく「デザインが良く」なりました。従来のarrows Beは、いかにも「スマホ」という、シンプルと言えばシンプル、悪く言えばちょっと古臭いデザインで、頑丈さ・安さを重視したモデルでした。

しかし、arrows Be3では頑丈さ・丈夫さは従来のまま(F-04Kと同等)、ディスプレイが流行の縦長・5.6インチの有機ELパネルに変更されており、画面の見やすさ・操作性もよくなっています。

また、これまでは本体の横にあった指紋認証センサーが背面に移動し、引き続きエクスライダー機能も継承されています。

なのに価格はF-04Kと全く同じな格安価格を維持しました。

前項で「F-04Kに物足りない部分」として挙げたカメラ・メモリといったところはほぼそのままなのですが、F-04Kを購入検討していたユーザーはF-02Lを買ったほうがおそらく満足度は高いでしょう。

☆「NTTドコモ arrows Be3(2019年モデル) F-02Lの詳細を見る

irumo
2018年夏ドコモウィズ アローズビー F-04Kを買って判った人気上位をキープしている理由

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