2021年-2022年、スマートフォンのカメラは高級コンデジクラスの性能へ手を届かせようとしています。

昨今のスマートフォンは多くの機種でカメラ機能に力が入っており、数年前のスマートフォンモデルでも「デジカメのように綺麗に撮れる」というPR文章は、もはや定型句のように感じられるほどです。

実際、カメラ性能が高い最新のスマートフォンは本当に生半可なデジタルカメラには負けないほどキレイな写真・印象的な画を作ることが出来る画像処理技術が搭載されており、スマホでお手軽にキレイな写真が撮れる素晴らしい時代になりました。

(3年前に発売されたGoogle Pixel3でもこのレベル。タップで拡大出来ます)

ほとんどの新しいスマートフォンでは人物・食事・風景・夜景・動物など、撮影したい対象に合わせてシーン判定を行い、最適な設定を自動で行うこと/特殊な効果撮影を行うことでインパクトのある写真を撮ることが出来るようになっています。

一方で、最新・最高峰のカメラ性能を有するスマートフォンでは「大きなイメージセンサー」に力を入れるメーカーも出現しはじめました。

「イメージセンサー」とは、カメラのレンズから入った光を受け取るためのパーツです。スマートフォンの場合は分解でもしない限り直接目にする機会は少ないかもしれませんが、レンズ交換式のデジタルカメラの場合は、下記のようにレンズ装着部分の奥に板状の半導体部品を見ることが出来ます。

スマートフォンの中にもこのようなイメージセンサーのパーツが埋め込まれており、一般的にこのイメージセンサーが大きいほどたくさんの光を取り込み・処理できるため、きれいな写真を撮ることが出来ます

これまではボディが大きな普通のデジタルカメラに比べて、スマートフォン・携帯電話では小さなイメージセンサーしか搭載することが出来ませんでした。

しかし、高画質を求めるスマートフォンメーカー・カメラメーカーとの協業により、最新モデルでは従来のスマホに比べて大きなイメージセンサーを搭載したスマホが出てきています。

スマホ用イメージセンサーの大型化

2021年時点、市販されるスマートフォン向けで最も大きなイメージセンサーとされるサイズは「1インチセンサー」・「1型センサー」と呼ばれる大きさに到達しました。

 

2021年夏モデルとしてドコモ・ソフトバンク、SIMフリーモデルとしても発売中のシャープ AQUOS R6は背面に大きな1個のカメラレンズを採用しました。

スマホ最大級(2021年5月時点)超大型の1インチセンサーが写真の美しさを決めます。 センサー面積が約5倍(AQUOS R5G比較時)になり、集光力が向上。 より高精細な写真を実現します

旧モデル AQUOS R5Gに使われていた1/2.55インチに比べて、1インチセンサーは5倍の大きさとしています。

ここで気になるのは、「1インチ」という表現です。

1インチセンサーのサイズが実際にどのくらいの大きさであるのか、イメージが浮かばない人もいらっしゃるでしょう。

スマートフォンのカメラ・デジタルカメラの世界で使われることがある「インチ」は、一般的な計量単位である「1インチ=2.54センチ」という意味ではありません

AQUOS R6および2021年12月発売のソニー Xperia PRO-Iのイメージセンサーは、縦・横・対角の長さで2.54センチの大きさがあるわけではないのです。

1インチセンサーの大きさ解説

「では1インチセンサーってどのくらいの大きさなの?」というと、センサーの大きさ・規格はメーカーや製品によって微妙に異なるため、精確な大きさはメーカーが発表しない限り不明です。

一般的な意味で使われる1インチセンサーのイメージセンサーの大きさは「13.2mm×8.8mm」(3.2比率の場合)と言われています。対角の長さは16mm。1インチセンサーのカメラパーツは、平均的な成人の小指の爪よりもやや狭いくらいです(AIST日本人の手の寸法データ参照)。

カメラのセンサーサイズに使われる”インチ”の大きさに対する知識が無いと、1インチ=2.54センチという印象があるため、2センチを超えるようなパーツがどこに入るのだろう?と疑問に思うかもしれませんが、実際には2021年最大クラスのスマホ用イメージセンサーでも小指の爪くらいの面積のパーツということになります。

1型サイズのイメージセンサーは、コンパクトカメラでは10万円クラスの高級モデルに搭載されるような大きさだと言われています。

例えばソニーのデジタルカメラ「RX100VII」という機種も1.0型CMOSセンサーを搭載しており、ソニーストア価格は約16万円です(2021年11月時点)。

一方、より本格的なミラーレスカメラ・一眼レフカメラに使われる「フルサイズ」「APS-Cサイズ」と比べると、まだ1インチセンサーサイズとは大きな差があります。

(イメージセンサーの縦横比率を再現した図)

1インチセンサーに比べて本格的なデジタルカメラのフルサイズセンサーは面積比で7倍以上も大きなものです。AQUOS R6やXperia PRO-Iであっても、まだ本格的なカメラにセンサーサイズで競えるような水準ではありません。

しかし前述の通り、この1インチサイズのセンサーでもスマートフォン用としてはかなり大きいものです。センサーサイズが写真の画質のすべてを決めるものではありませんが、最先端機種では古い世代のセンサーより何倍も大きく、たくさんの光を取り込むことが出来るようになったため、大型センサー搭載スマホなら高画質でキレイな写真を期待出来ます。

関連記事:1インチセンサーサイズ [実機レビュー]AQUOS R6写真の「ボケ」比較 デジカメ並の画質は本当か検証

各社のカメラ進化状況

カメラの「画素数が大きい」ことは必ずしも写真の画質が良いことを意味しませんが、センサーサイズについては大きければ大きいほど光を沢山とりこめるため、画質の向上に関わってきます。

ソニースマホの場合、2019年モデルのXperia 1は1/2.6型、2020年モデルのXperia 1 II/2021年モデル Xperai 1 III/5 IIIのメインカメラは1/1.7型です。

ソニーでは2022年モデル Xperia 1 IVもメインカメラは変わらず1220万画素 1/1.7インチセンサーで据え置きとなりました。代わりに望遠(ズーム)レンズを変更し、光学ズーム機能を搭載しました(レビューはこちら)。

Googleのスマートフォン Pixel 6 (Pro)のメインカメラセンサーも大きく、「1/1.31型センサー」を搭載しました。旧型のPixel5よりも格段に大きく進化しています。

具体的なセンサーサイズは非公開ながら、2021年モデルのiPhone 13 Pro(Pro Max)も従来モデルより大きなセンサーを使っているといいます。

シャープの2021年モデル AQUOS R6で1インチ到達、2022年モデルも同じく1インチセンサーを積んだAQUOS R7を発表しています。

AQUOS R7ではセンサーサイズは引き続き1インチですが、ピクセルピッチを変更して3.2μm(1.6μm×2個)に大きくすることで、AQUOS R6よりも明るく撮影が出来るようにしたとしています。また、旧機種で発売当初評価が低かったオートフォーカスについても向上していると豪語しています。

AQUOS R6/R7とXperia PRO-Iの「1/1型」は最大級ですが、その他の最先端スマートフォンもセンサーサイズを大きくする傾向にあります。

大きなイメージセンサーを使ったスマホの写真品質に興味のある方は、各メーカーがアピールする「大型イメージセンサー搭載機」を試してみるのも良いかもしれません。

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