iPhone11のカメラはソフトウェアアップデートにより、旧モデルとは別の次元に到達したようです。
2019年モデルのiPhone 11シリーズでは、ノーマルのiPhone 11には「超広角+広角」のダブルレンズ、11 Proと11 Pro Maxには「超広角+広角+望遠」のトリプルレンズを搭載し、過去のiPhoneに比べて幅広い場面で適切なレンズを使うことにより、より高い画質・より印象的な写真が撮れるようになったことは、発売直後の時点でも判っていました。
また、iPhone11シリーズからの新機能として「夜景モード」が追加され、夜景撮影やライトアップなど、一般の状況よりも暗い場所でも綺麗な写真が撮れるようになっていました。
この時点でも十分に旧モデルと最新iPhone 11シリーズの実力の差を感じることは出来たのですが、2019年10月末にiPhone11, iPhone11 Pro, iPhone 11 Pro Maxに配信された最新のソフトウェア「iOS 13.2」の更新により、2019年モデル3機種は新しく「Deep Fusion」と呼ばれるカメラに関する新しい画像処理システムが使えるようになりました。
新しい「Deep Fusion」が適用されるのは、iPhone 11シリーズのみであり、2018年以前に発売された旧モデルは対象外です(iOS13.2の時点)。
ソフトウェアアップアップデートには「低照度の場所で取り込んだ画像の質感と細部の表現を大幅に向上」と説明されていますが、これがどのように写真のクオリティに影響を与えるのか、早速さまざまなスマートフォンで撮り比べてみましたので、最新iPhone 11× iOS 13.2の破壊力をとくとご覧頂きましょう。
今回比較に利用したスマホは以下のとおりです。
・iPhone 11 Pro
・iPhone X
・P30 Pro HW-02L
・Google Pixel 4
・Google Pixel 3
・Xperia 1 SO-03L
・AQUOS sense2 SH-01L
AQUOS senseは格安モデルですが、その他はすべてハイエンドモデルです。
iPhone XはiPhone 11から見て2世代前の2017年モデルとして、ちょうど今年が機種変更のタイミングになるユーザーも多いと思います。
Huawei P30 Proはクアッド(4個)レンズ搭載、2019年夏モデルまでのスマホでは世界最高峰と言われたカメラを搭載した機種として、比較用に用意しました。
Google Pixel 4は2019年10月24日に発売されたばかりの、最新Googleスマホです。Pixel 3は型落ちとなった2018年モデル。
Xperia 1 SO-03Lは2019年夏モデルとして登場したXperia初のトリプルレンズカメラ搭載スマホであり、2019年冬モデルとしてドコモからも11月1日に発売されるXperia 5と全く同じカメラを搭載しています。
暗所での作例比較
ではさっそく、部屋の照明を暗くして(シーリングの豆電球のみ点灯)、三脚を使わない手持ち撮影にて、各機種全く同じ環境で実寸台のネコの置物を撮影したものを比較していきます(記載の無い限り、すべて圧縮/トリミングのみ、明るさや色合いは無加工の写真です)。
まずは、どのくらい暗い環境なのか?を理解していただくために、2018年モデルの格安スマホとして大ヒットした、AQUOS sense SH-01Lの写真から見てみましょう。
いかがでしょうか。じっくりと見ればネコの顔がぼんやりと見えてくる・・・でしょうか。
「猫が写っている」ということを知っていればネコの白い顔・手の部分は見分けられるかもしれませんが、今回の撮影環境がレベルの低いスマホカメラではほとんど何も映らないくらい暗い部屋である、ということをご理解いただければ十分です。
AQUOS sense2も明るい環境であれば綺麗な写真が撮れるのですが、極端に暗い環境では夜景モードが無いため、オートモードではこれが限界です。
では続いて、2年前に発売された Apple iPhone Xの写真を見てみましょう。今度はちゃんと「ネコ」が居ることが判るくらいに、ネコの鼻の部分・手足が見えていると思います。2年前の2世代落ちしたiPhoneとはいえ、まだまだ低価格なスマホには負けないカメラ水準にあります。
しかし、iPhone Xは超広角レンズを搭載しておらず、夜景モードもDeep Fusionも使えません。これから紹介する最新モデルの「夜景モード」に対応したスマホには敵わなくなっていることが以下の作例を見れば一目瞭然となります。
次はソニーの Xperia 1 SO-03Lで撮影した写真を見てみましょう。
Xperia 1には「夜景モード」という専用モードはありませんが、オートモードではAIにより「低照度」であることを認識して、通常よりも長いシャッター時間が設定されます。これにより、多少は暗い環境にも強くなりましたが、極端に暗い環境では綺麗に撮れているとは言い難い水準です。明るさ自体は比較的見やすい明度に調整されているものの画質を比べると、2年前のiPhone XにもXperia 1, Xperia 5は及ばないといったところでしょう。
ここまでの3台(AQUOS sense2, iPhone X, Xperia 1)は、はっきり言って前座です。
次からの機種は専用の「夜景モード」がオート(AI)で判定されて適用され、暗い環境での撮影に圧倒的な強さを見せてくれますので、ご期待ください。
ではまず、2018年モデルとして発売され、現在はとても安く購入できるようになったGoogle Pixel 3の夜景モード写真を見てみましょう。
先程までのiPhone XやXperia 1ではぼんやりとしか判らなかったネコの顔が、ネコの額に貼り付けられたSIMカードが、そして毛並みの様子までハッキリと見えるようになりました。
Pixel 3を含むGoogleのPixelシリーズでは、Googleならではの高度な画像処理技術により、このような夜景モードによる画質の底上げが強力に効いています。この夜景モードは上位のPixel3/3XL/4シリーズだけではなく、廉価なPixel 3aシリーズでも利用可能です。
関連記事:Pixel3aのカメラすごすぎ!夜景モードを使った色補正で「本来の色」を見る
次はPixel 3の後継モデルとしてズームレンズを追加したGoogle Pixel 4で撮影した写真です。こちらも夜景モードを使っています。
ちょっと撮影した角度がPixel 3とは違ってしまいましたが、Pixel4でも暗い環境においてネコの毛並みが判るほどにくっきりと撮影が出来ています。画質面についてはPixel 3とPixel 4では大きな違いはありません(メインカメラは同じ1220万画素で、F値は1.8→1.7に変更されている)。
Pixel 4のカメラではズームレンズ(望遠)が追加されたことは大きな変更点ですが、メインカメラの画質・夜景モード自体に極端な進化は無いため、今回のような結果となりました。
Pixel4の場合(後日のソフトウェア更新で旧シリーズも対応予定)は、上記の撮影には使っていませんが撮影時にハイライト部分と暗い部分をそれぞれ別々に明るさ調整を設定して、コントラストを自由に設定できるコントロールが出来ます。撮影後に加工することは多くのスマホ・アプリで可能ですが、撮影時点で微調整を行うことで通常の撮影では難しい明暗差の激しい環境でも綺麗な写真が撮れるシステムがあるのも素晴らしいです。
次はいよいよ、iOS 13.2に更新してDeep Fusionが適用されているiPhone 11 Pro の写真です。
どうでしょうか。拡大した写真は下記で別途掲載しますが、Pixel 3/4と比べても毛並みの濃淡がさらにくっきりと判別できて、まるでフラッシュを炊いたような明るい写真に仕上がりました。
iPhone 11 Proでの撮影時にはオートで長時間露光に切り替わり、上記の例では最大10秒の撮影時間設定になっています。通常のデジタルカメラでは三脚なしで10秒間もカメラを動かさず保持することは絶対に不可能ですが、iPhone 11 Proでは全くと言って良いほど手ブレは起きません。まさに驚異の技術です。
「Deep Fusion」はオン・オフを切り替えることは出来ないため、アップデート前後で全く同じ環境の比較写真はありませんが、Deep Fusionが利用できる前の状態よりも確実にノイズが少なくなっていると感じられます。
最後に、iPhone 11 Proの水準を比較するためにファーウェイの最強カメラスマホ P30 Pro HW-02Lで撮影した写真も見てみましょう。
ドコモ P30 Pro HW-02Lの夜景モードも、やはり低価格スマホ・他メーカーとは別次元のクオリティです。人間の目でははっきりと見えないほど暗い場所でも、まるで昼の明るさのような写真に仕上がりました。
頂上決戦として、iPhone 11 ProとP30 Proで撮影した写真を大きく拡大してみます。
上がiPhone 11 Pro, 下が P30 Proの拡大写真です(クリックするとさらに拡大出来ます)。
どちらも非常に高い水準ですが・・・ネコの額より上の部分・毛並みのより黒い部分を拡大して比べると、Deep Fusionが利用できるようになったiPhone 11 Proに比べて、P30 Proのほうがノイズが少ないことが判ります。
Deel Fusion適用前のiPhone 11 Proでは暗所撮影においては、はっきり言ってP30 Proには遠く及ばない水準でした。これが今回のアップデートにより、上記の通り最高峰と言われるP30 Proにも迫る暗所撮影のノイズ軽減を実現している、という結果になりました。P30 Proはバケモノ級なので・・・
関連記事:[iPhone11 Proカメラレビュー] 月面が撮れると有名なP30 Pro HW-02Lと撮り比べ(Pixel3, Xperia1とも比較)
アップデートを行ってもまだP30 Proのほうが綺麗だと管理人は評価しますが、今回のDeep Fusion更新はiPhone 11シリーズのカメラ評価を大きくアップさせるものだったと思います。
最新の他社最高峰カメラ機種とiPhone 11シリーズを比べて「iPhoneが断然に綺麗だ」とは言いませんが、上記の通り2年前のiPhone Xや1年前のXSシリーズに比べて断然進化したiPhone 11のカメラを、ぜひ最新のiOSへ更新して体験してみてください。
2019年10月末時点ですでにドコモ・au・SoftbankではiPhone 11シリーズの在庫は増えてきており、多くのカラー・容量モデルが即納状態になっています。