ファーウェイの最新SIMフリースマートフォン Mate20 Proに搭載された「パフォーマンスモード」を実機で検証した結果を公開します。
2018年夏頃、海外においてファーウェイ製のいくつかのスマートフォンが「ベンチマークアプリを測定するときだけ処理性能を向上させている」として、ベンチマーク不正・ベンチマーク詐欺などいう情報が出回っていました。
類似の操作は過去に他社のメーカー・機種でも噂を目にしたような記憶がありますが、ファーウェイの場合は事実として特定の条件下において通常時よりも高速な処理を行う「パフォーマンスモード」が存在しており、Mate20 Pro(国内向けLYA-L29)ではユーザーが自由にパフォーマンスモードのオン・オフを切り替えることが出来るようになりました。
Mate20Proのパフォーマンスモードを切り替える方法
【設定】→【電池】→ [パフォーマンスモード]のスイッチをオン→注意表示を確認して「有効にする」をタップ
パフォーマンスモードをオンにすると、ステータスバーにメーターアイコンが表示されます。
パフォーマンスモードを有効にしている間、端末の処理を最適化することにより端末の発熱などが発生する注意表示がでます。デフォルトではパフォーマンスモードはオフになっているはずですが、特に必要のない場合にはパフォーマンスモードをオフにした状態にしておくことをオススメします。
パフォーマンスモードオン/オフ時のベンチマーク処理と発熱変化
パフォーマンスモードを使うことで端末の処理性能を最大にまで開放します。その影響でどのくらい性能がアップするのか、本体の発熱が起きるのかを、実際に国内モデルのMate20 Proにてチェックしてみました。
測定には有名ベンチマークアプリ Antutu Benchmark(ver7.1)を利用し、パフォーマンスモードがオフの状態・オンの状態でそれぞれ5回ずつ連続でベンチスコア測定を繰り返すことで、Mate20 Proに通常以上の過負荷を掛け続けてみました。
端末の温度測定には「放射温度計」を用いて、Mate20 Proのディスプレイ面・上部の表面温度を随時測定しています(放射率を0.95で固定しているため、実際の表面温度を正確に測っているわけではありません)。
測定時の室温は22℃で、放射温度計でスマホガラス面を測定すると約23℃の表示となっていました。
パフォーマンスモードのオン/オフの切り替えはテスト後十分に時間を空けて、端末温度が室温に戻ったことを確認してから測定を実施しています。
測定回数 | パフォーマンス モードオフ |
パフォーマンス モードオン |
0回 | (23.2℃) | (22.5℃) |
1回目 | 271,261点 (30.0℃) |
304,513点 (30.9℃) |
2回目 | 271,420点 (33.2℃) |
302,426点 (34.2℃) |
3回目 | 252,444点 (34.8℃) |
301,234点 (36.7℃) |
4回目 | 250,364点 (34.9℃) |
298,440点 (37.8℃) |
5回目 | 252,124点 (34.9℃) |
297,998点 (39.7℃) |
結果は一目瞭然、パフォーマンスモードをオンにすると確かにベンチマークスコアが跳ね上がり、発熱がひどくなりました。
パフォーマンスモードを使っていないときにもAntutu Benchmarkスコアは25万点~27万点ほどが出ており、2018年夏~冬スマホの多くに搭載されているハイエンドチップ Snapdragon 845と同等レベルのスコアが出ています。
パフォーマンスモードへ切り替えるとベンチマークスコアはおよそ1割アップし、ブーストが効いていることがよく判ります。
Antutuベンチマークのスコアは上記の通りですが、アプリの測定中に表示されるアニメーション・表示処理に関しては、目視では大きな差は見られませんでした。ただし、ベンチマークの測定1回あたりにかかる時間はパフォーマンスモードオフ時に約7分40秒であったのに対して、パフォーマンスモードをオンにすると7分25秒前後まで短くなっていました。
パフォーマンスの切り替えで劇的に動作が変わるわけではないものの、確かにベンチマークの測定結果に有意な差を生じさせる事がわかりました。
処理能力と引き換えに、発熱が悪化する
今回の実験ではMate20Proのディスプレイ側の温度変化を測定していますが、Mate20 Proの場合は下記写真で赤く囲ったカメラ回りが特に熱くなりやすい傾向にあります。
ディスプレイ面に関しても、半分よりも上~ノッチがあるディスプレイ末端よりやや下のあたりが集中して熱くなりやすく、スマホの下部と明確な温度差がありました(測定したのは熱くなりやすい上部)。
パフォーマンスモードを使わない場合、5回のベンチマーク測定で約40分間の連続動作をさせた後に実際に手で触ってみたところ、熱を感じるものの「とても熱い」というほどではありません。放射温度計の表示で35℃くらいですから、ちょうど人肌程度です。パフォーマンスモードをオフにしていれば、連続でゲームをしてもそこまで発熱は気にならないでしょう。
一方で、パフォーマンスモードをオンにしてブーストをかけると、ベンチマーク測定中の温度はオフ時に比べて早く上がってゆき、表面温度は40℃近くまで到達しました。この温度になると明らかに「熱い」と感じるレベルです。
ベンチマークのスコアは5回目(連続動作でおよそ38分)の測定後にも30万点弱を維持しており、温度上昇を無視して高処理を続けていることが反映されているようです。パフォーマンスモードを使わない場合は35℃程度になった時にスコアがやや下がっており、動作制御に違いがあることが推測されます。
Mate20 Proでは0℃~35℃程度の範囲で使うことが想定されています。今回表面温度で40℃まで上昇させても特に異常は見られなかったものの、一般のスマホであればそれを極度に超えた発熱状態になるとカメラや充電に制限が掛かったり、フリーズ・強制シャットダウンをさせる端末もあります。過熱状態が長く続くとバッテリーや端末の各種機能に異常・故障・消耗や劣化を引き起こす可能性もあるため、「手で触って明らかに人肌より熱い」という状態を長く続けることは推奨されません。35~40℃程度の温度でも、長時間触れ続けると低温やけどを引き起こすこともあります。
パフォーマンスモードをオンにすると端末温度が40℃を超えても通常時より高い処理能力を維持し続けてしまいますので、どうしても必要な時以外は使わない・発熱を感じたら端末を休ませる・冷えてから利用を再開することをオススメします。
Mate20 Proに搭載されたCPU Kirin 980は、パフォーマンスモードを使わなくても2018年夏モデルのP20 Pro(HW-01K)などに搭載されたKirin 970よりも高い処理能力を発揮しますので、大半のゲームが快適に動く能力は持っています。
40℃程度の温度上昇で簡単に壊れるようなことはないはずですが、意味なく高温状態にし続けて高額なMate20 Proが壊れてしまっては残念すぎるため、パフォーマンスモードのオン・オフの利用場面はよく考えて切り替えてみてください。
関連記事:SIMフリー DSDV対応のMate20 ProとP20 Pro(HW-01K)の違い スペックや取扱価格情報まとめ
今回は空調の効いた涼しい部屋で、端末をスタンドに立てかけたまま測定しています。周囲の温度がもっと高い場合・手で端末を握る・ケースやフィルムを付けて排熱効果が下がっている場合には、さらに端末温度が上昇することも考えられます。上記の結果・考察は今回のテスト環境によるものであり、すべての端末で同じ結果になるものではありません。あくまでMate20 Proのパフォーマンスモードに関する参考情報として御覧ください。