2020年モデルの小型iPhone「iPhone 12 mini」は”電池持ちが悪い”という評価を得ることが多くなっています。

iPhone 12 miniの電池容量は2,227mAh(非公式数値)となり、旧世代の4.7インチモデル iPhone 8やiPhone SE(第2世代)より大きなバッテリーを搭載しているものの、より大きくなったディスプレイパネル・超高性能なA14チップによる消耗などの兼ね合いから、利用用途によって電池消耗が気になる状況になっています。

また、iPhone 12シリーズは5G通信に対応し、超高速通信に利用される消費電力の増加・5G/4Gネットワークエリアの接続不安定さから電池消耗が大きくなるという傾向は、iPhoneに限らず5G対応スマートフォンで共通しています(ドコモによる実利用可能時間テストでも、ほとんどの5G対応機種で「4Gのみ」に設定したほうが利用時間が延びることが知られています→ docomoスマートフォンでバッテリーの持ちが良い機種はどれ?実利用可能時間ランキング)。

本体重量が他のiPhone 12より圧倒的に軽いiPhone 12 miniでは大きな電池容量のバッテリーが積めず、電池の減りが大画面モデルに比べ相対的に早いことはiPhone 12 miniを買う前から誰でも理解して購入を検討するはずですが、実際にどれくらい違うのか、さまざまな節電設定を施したiPhone 12 miniと、iPhone12シリーズ最大の電池を積んだ iPhone 12 Pro Maxの実機でYoutubeを連続再生して確かめてみました。

*今回利用したiPhone 12 miniは実際に普段から使っているため、初期状態(購入直後のまま)ではありません。設定も電池が長持ちするように多くを変更した状態となっていますので、アップル公式を含む他の比較情報とは結果が異なる可能性があります。詳しい節電設定は「[iOS14]iPhone12miniの電池長持ち・節電設定にする方法(5G無効化/更新オフなど個別設定)」を参照ください。

電池持ち実験時の設定概要

今回の電池持ち検証ではYoutubeのライブ動画を連続再生することで行いました。

再生する動画の画質は720p、ライブ動画ですので常時通信をし続ける状態です。ディスプレイの明るさは両機種とも最大輝度に設定しています(True Toneオフ)。iOSのバージョンは14.2.1です。

接続はWi-Fi、モバイル通信はオン(4Gのみ)になっています。Bluetooth・GPSはオフ設定です。

アップルでも公式サイトのバッテリー情報として「ビデオ再生時間」を表記していますが、アップルの場合はiTunesの映画を連続再生した場合のデータであり、当サイトの実験とは全く環境・前提が違います。iPhone12mini/Pro Maxの細かな設定も同じではありませんので、「実際に使っている設定のiPhoneでコレくらい見られる」という大雑把な目安として参考にしてみてください。

実験データと結果

iPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxで同じ動画を同時に再生し、90分間の電池消耗を随時チェックして残量を記録しました。

経過時間と電池残量をプロットしたグラフは以下のとおりです。

iPhone 12 miniの場合、Youtube再生1分あたりの電池消耗は約0.166%、iPhone 12 Pro Max の場合は約0.12%となりました

最小二乗法による回帰曲線は1次関数で近似され、R^2値はそれぞれiPhone 12 miniの場合は0.995、iPhone 12 Pro Maxの場合は0.999となっています。

*動画の再生可能時間は設定・環境により大きく変動します。設定を変えるともっと短い時間で電池が無くなる/もっと長い再生時間を確保することも可能なはずです。

実験結果の考察と解説

事前の予想通り、Youtubeを再生する場合にはiPhone 12 miniのほうがiPhone 12 Pro Maxより電池残量の減りが早いという結果になりました。

iPhone 12 miniの場合は1分で0.166%、1時間あたりの消耗は約10%となります。つまり、連続で最大10時間くらいのYoutube再生ができるという結果になりました。

一方、iPhone 12 Pro Maxの場合は1分で0.12%、1時間あたりの消耗は約7.2%となります。iPhone 12 miniに比べて4割弱長く再生が可能という結果になっています。

ここで、アップルによるビデオ再生時間(ストリーミング)のデータと見比べてみましょう。

機種/ビデオ再生時間 当サイト
(Youtube再生)
アップル
iPhone 12 mini 最大10時間 最大10時間
iPhone 12 Pro Max 最大13.8時間 最大12時間

前述の通り、当サイトのテストとアップルの公式サイトにある「ビデオ再生時間」の定義・実験内容が全く違います。たまたまiPhone 12 miniの場合は同じ時間になっているだけであり、「iTunesでもYoutubeでも同じ電池消耗」という意味ではありません

アップルの動画再生テストについては、以下のような設定内容が公開されています。

ビデオの再生では、iTunes Storeから購入した2時間23分の映画を連続再生しました。ビデオの再生(ストリーミング)では、iTunes Storeから購入した3時間1分の映画を連続再生しました。Bluetoothをヘッドフォンとペアリングし、Wi‑Fiをネットワークに関連付け、Wi‑Fiネットワークへの接続の確認と明るさの自動調節、True Toneをオフにした以外は、デフォルト設定でテストを実施しました。

一方で、「iPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxの再生時間の比率」は、当サイトで1.38倍・アップルでは1.2倍となり、iPhone 12 miniに比べてiPhone 12 Pro Maxのほうが2~3割くらい動画を長く再生出来る、という傾向は似たものとなっています。

ここで、アップルが公表している他のモデルのビデオ再生時間も比較してみましょう。

モデル ビデオ再生時間(最大)
iPhone 12 Pro Max 20時間
iPhone 12 / iPhone 12 Pro 17時間
iPhone 12 mini 15時間
iPhone 11 Pro Max 20時間
iPhone 11 Pro 18時間
iPhone 11 17時間
iPhone XS Max 15時間
iPhone XS 14時間
iPhone XR 16時間
iPhone X 13時間
iPhone 8 Plus 14時間
iPhone 8/iPhone SE2 13時間
iPhone 7 Plus 14時間
iPhone 7 13時間
iPhone 6s 11時間

この通り、iPhone 12 miniが歴代のiPhoneに比べて特にビデオ再生時間が短いということはなく、iPhone 6s/7/7Plus/8/8Plus/X/XS/XS Maxからの機種変更であれば、電池持ちは良くなる~同じくらいの動画再生時間が期待出来ます。

”iPhone 12 miniの電池持ちが悪いらしい”という評価やクチコミを見て購入を迷っている場合、iPhone 12 miniよりもビデオ再生時間が短い機種(旧機種で満足している場合)からの買い替えであれば、それほど心配しなくても良いでしょう。

一方で、やはりiPhone 12 miniの電池容量の小ささは、実際の利用時間にも反映されています。より大きなiPhone 12やiPhone 11シリーズより電池消耗が早くなってしまうということは避けられません

例えばiPhone 12 Pro Maxは大きなディスプレイを搭載しているため、ゲームや動画再生などでは電池消耗が大きく「実利用可能時間」はあまり長くはなりませんが、連続待機時間はiPhone 12 miniよりもかなり長くなります。

また、今回は「Youtubeを再生する」というさほどCPUパワーを必要としない条件での比較をしていますが、より高負荷なゲームアプリを遊ぶ場合には旧型iPhoneより電池消耗が早く感じられる可能性があり、”想定する利用方法・利用頻度”によって電池持ちの感じ方も変わります。

実際に管理人も発売日からiPhone 12 miniを音楽プレイヤー+カメラをメインに利用して、1~2日に1回は充電をしないと不安になるくらいには電池の減りの早さを感じています。

ただ、iPhone 12 miniの魅力はなんと言ってもこの小型さです。

iPhone 12 miniの持ち運びやすさ・操作性の長所が、電池持ちの悪さという短所より大きいと判断出来るのなら、iPhone 12 miniは昨今のスマホ大画面化に辟易した人にはベストな選択になると思います。

また、お値段的にもiPhone 12シリーズでminiが最安となっており、最小・最安のiPhone 12 miniには電池減りの早さをカバー出来る魅力いっぱいのモデルであることは間違いないと思います。

[実機テスト]電池持ち悪いiPhone12miniと最大のiPhone12ProMaxでYoutubeを何時間再生出来るか検証