2019年4月15日、ドコモは端末販売および端末購入補助と携帯電話回線の基本料金を分ける”分離プラン”として、2019年6月1日より「ギガホ/ギガライト」開始することを発表しました。

一方、auでは2019年6月1日より値下げした料金プラン「au・新ピタットプラン」ほか2種類のプランを提供開始予定であることを発表しました。

ドコモの新プランでは”従来のプランよりも4割値下げせよ”という総務省のお達しのもと、料金の大幅改定が実施されます。

しかし、すでに当サイトでも解説したとおり、ドコモが4月時点で発表した”値下げ”の対象には、iPhoneやスマートフォン・ガラケーなどの携帯電話機種本体代金部分がすっぽりと抜け落ちており、2019年5月31日までに現在適用できるほとんどの端末購入補助に関わる値引き・割引の受付が打ち切られてしまうことも明らかになっています。

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機種代金部分の販売価格・割引について、NTTドコモでは「端末購入補助を完全に無くすことはない」と発言されているため、実際の2019年5月までの現行プランと2019年6月以降の新料金プランに”スマホ契約・利用に関わる全コストの差”は、不明瞭です(比較が難しい・分かりづらいという話ではなく、2019年4月末時点では”未定の新しい割引”の部分が重要になるため、明確な比較計算自体が成り立ちません)。

参考:NTTドコモ公式 2019年新料金シミュレーター

ここで、ドコモでは一応(消費者はともかく、少なくとも総務省が納得するかもしれない)”4割値下げしろ”という課題をギガホ/ギガライトによって回答を出したということになりますが、ソフトバンクやauが今後ドコモの新プランに追従するのかどうかという点も油断できない状況となってきました。

[最新情報]2019年6月、au新プラン始動auは2019年5月13日、新しく最大4割の料金値下げとなる「au新ピタットプラン」/「auフラットプラン7プラス」「auデータMAXプラン」を発表しました。いずれも機種購入の月額値引きはつかない「分離プラン」となり、ドコモプランに対抗しています。詳しくは「au2019年新料金プランの提供開始予定スケジュール」を参照ください。

auにはすでに端末の月額割引無しのプランがある

NTTドコモが2019年4月に発表したプランをひと目見ただけでも多くのユーザーが気付いたことだと思いますが、ドコモの「ギガホ/ギガライト」と類似の料金プランは、すでにauにもソフトバンクにも存在します。

auではドコモに先駆けること2年前、2017年7月14日から「auピタット/フラットプラン」を導入しています。

ドコモの2019年新プランとauの2017年プランは細部まで全く同じというわけではなく、ところどころにシステムの違い・適用範囲・条件の違いがあるため、”auのパクリ”というほどではないにせよ、多くの類似点があります。

・使った量に応じて料金が変わる多段階プラン [ギガライト↔ピタットプラン]
・毎月大容量のデータ通信を使う人向けのプラン [ギガホ↔フラットプラン]
・プラン契約から一定期間だけ割引される仕組み [ギガホ割 ↔ スマホ応援割]
・ネット回線とのセット割引 [ドコモ光セット割↔ auスマートバリュ]
・月々の機種値引きが使えない [月々サポート廃止 ↔ 毎月割廃止]

日本の通信会社で携帯電話・スマートフォンを購入・契約する場合に重要な部分が、auの現行プランとドコモの新プランでは重複しています。

auではauピタット/フラットプラン導入前の主要プラン「LTEフラットプラン」などに比べて、ピタットプラン加入者の8割が”安くなった”と感じているそうです(2018年6月、KDDI調査データによる)。

auピタット/フラットプランだけじゃダメなのか?

ドコモやソフトバンクに先駆けて 上記のauピタットプラン・auフラットプランを導入しており、端末購入補助の”毎月割”が適用されない新しい料金体系を拡大してきました。

ドコモが2019年新料金プランを発表した時点で、KDDIでは「より魅力的なプランを提供する」と何らかの対抗プラン・新しいプランや変更を追加してくる方針を示しています。

というのは、確かにauの”2017年からの新プラン”は毎月割による端末購入補助は対象外となっていますが、ドコモが2019年5月31日で廃止する”端末購入サポート”に該当する”MNPau購入サポート”がまだ残っています。総務省の示すガイドラインでは、まだauの現行プランでは”分離プランの義務化”に完全に沿っているとは言い難い(と総務省が判断する可能性が高い)でしょう。

2019年4月時点で提供されているau購入サポートでは、対象の機種を対象の種別(他社乗り換えのみ、機種変更も対象になる機種など、モデルごとに差別化があります)で指定プランに加入して購入すると、本体価格を最大6万円割引するというものです。

機能と性能の向上に伴って定価だと10万円を超えるような高額なiPhone , スマートフォンが登場するようになってきた現代において、MNP購入サポートのような割引がない場合は、機種代金を分割支払いにしても高額な割賦契約となり、分割審査に通らないユーザーが出てくるケースもあります(関連記事)。

そこで購入サポートによって”購入時点の支払額を値下げする”ことで、ユーザーに買いやすい価格を実現するという手法をドコモでは「端末購入サポート」auでは「iPhone/Android MNPau購入サポート」、SBでは「一括購入割引」として導入していました。

ただし、単に機種代金が下がるというだけではなく、割引が適用される機種は指定されており、”機種代値引きと料金プラン”は分離されていません。購入から一定期間に回線の解約・指定対象外プランへの変更をすると、高い割引解除料が発生するシステムを各社が採っています。

12カ月以内に「auピタットプラン」、「auフラットプラン」、「データ定額1~30」または「LTEフラット」以外のプランへの変更、解約・一時休止、端末購入を伴う機種変更を行った場合、本割引による端末購入後の経過月数(購入月を1カ月目とする)に応じて、下記表に記載の解除料がかかります。

 

各社の一括値引きシステムは”月々の値引きとしていた割引を全部前借りする”ような仕組みになっています。ユーザーにとって購入時の負担が安くなるというメリットがある一方で、機種代・料金プランと割引が指定条件により固定されており、シンプルとは言い難い(と国が思っている)のかもしれません。

しかしこれをドコモが廃止せざるを得ない状況になったということは、au・SBでも「特定機種の購入/指定プランへの加入を引き換えにした割引」=”非分離プラン”と見做され、ドコモの新プランと同じくau購入サポートも使えない新しい仕組みのプランが出てくることが予想されます。

旧プラン系「LTEフラット」は廃止になる可能性も

auでは月額割引が付かない代わりに基本料金が従来プランよりも割安になるauピタットプラン/フラットプランが2017年から提供されている一方で、ドコモが廃止する”月々サポート(月額割引)”に相当する料金の仕組みである”毎月割”も2019年春時点では引き続き提供されています。

毎月割を適用する場合はauフラットプラン/ピタットプランではなく、2017年よりも昔からある、パケット定額系のプランへ指定加入があります(加入条件はスマホ・ケータイ・タブレットなど端末種別によって異なる)。

ドコモでは2019年6月1日以降、旧プランの「カケホーダイ&パケあえる」や「ベーシックパック/ベーシックシェアパック」など、現行プランの受付をすべて打ち切ってしまいます。これも総務省の意向による廃止であり、”料金プランをシンプルに”という方針を各キャリアが料金改定を進めなければいけなくなった場合に、auもいよいよ旧プラン(ピタット/フラット以前のプラン)を廃止・改定する可能性が高いと言えます。

また、これらの割引を前提とした「実質0円」や過剰な割引補助に関しても総務省は規制化する方針案を出しており、何らかの対応をドコモと同じように求められるものと予想されます。

auの完全分離プラン化はいつ起こる?

2019年4月時点において、総務省では「モバイル市場の競争環境に関する研究会」をこれまでに何度か開き、随時通信事業者と利用者の実態に合わせたガイドライン作成・ルール改正のための準備・方針策定を進めている段階です。

現時点ではまだ「20xx年の▲月までに、過去のプランを廃止して完全分離プランにせよ」といった、確定したルール・義務化は発動していません。ドコモでは2019年6月1日を境目として旧プランの新規受付を廃止・新料金プランへの全面以降を開始しますが、それはあくまで”ドコモの運用方針”によるものです。

auやソフトバンクが、ドコモが6月から開始する新料金プランに合わせて、さらに新しい料金体系やプラン・割引の仕組みを変更する場合にも、準備と提供開始にはそれなりの準備期間が必要でしょう。

そのなかで一つの目安として、現在通信キャリアには国内の中古スマートフォン・端末の流通を拡大する目的として、キャリアロック(SIMロック)解除の義務化を求める方針を2018年8月の時点で打ち出し、2019年9月までの対応を求めています。これに対してドコモでは2019年2月20日より中古端末のSIMロック解除対応を開始、au・SBは2019年9月に向けて準備中となっています(2019年1月の中間報告書による)。

総務省が”完全分離プランの導入”、”よりシンプルなプランの提供”(旧プランの継続提供の打ち切り)をガイドラインとして最終報告した場合にも、相応の準備期間(SIMロック解除の場合は約1年)が必要となるため、KDDIが新ガイドライン施行直後に改定をするか、あるいはガイドラインに示された期限ギリギリまで提供しつづけるかによって、完全分離プランへの移行が実行されるまでしばらくの時間が掛かる見込みです。

auがドコモの”4割値下げ”に対抗した新プランを出すタイミングは、早ければドコモと同じ2019年夏に導入出来る5月・6月頃になる可能性も考えられます。商戦略としても何らかのインパクトがあるサービスや割引、キャンペーンを2019年夏モデルの発売時期・ドコモの新プラン開始時期に対抗して打ち出す、というシナリオは有り得そうな話です。

ドコモの新料金プランを見ても判るように、新しいプランをauが追加したとしても、一律・無条件ですべてのユーザーの”スマホ料金が安くなる”という改定を期待することは難しいでしょう(→2019年6月からの新プランではやはり「家族で利用」・「ネット回線とのセット割」などの条件が付きました)。

(2019年au新料金プランの割引内訳)

auがドコモに対抗する何らかのプランや戦略を出してきた場合にも、現行プランと新プランのどちらが自分の使い方に合うのか、本当に節約になるのはどちらのプランなのかを、ユーザー自身が判断して、スマホ代の節約を目指すしかなさそうです。

auの完全分離プランはいつから始まる?ドコモ2019新料金の4割値下げへの対抗で変わるか