本ページはどんなことをしてでもスマホのカメラを使って星空をズームで撮りたい!」という過激な欲求を満たしたい人向けのレビューです。

2022年春夏モデルとして日本国内でも発売中のハイエンドスマートフォン Galaxy S22 Ultraには高性能なズームカメラレンズが搭載されています。

Galaxy S22 Ultraのカメラを使えば、何も考えずただシャッターボタンを押すだけでほとんどの場面においてキレイな写真を撮ることが出来ます。

Galaxy S22 Ultraには大型のカメラセンサーが使われており、夜景やライトアップなど一般的な「夜の写真撮影」の性能はかなり高めです。

しかし、「ズームレンズを使って星空を撮る」という場合、そのままでは綺麗な写真にはなりません(作例は下記に掲載)。スマホはもちろん、普通のデジタルカメラを使う場合でもズームレンズを使った暗い場所での撮影は困難なケースがあります。

そこで今回は星空をデジタルカメラ・望遠鏡で撮影する場合によく使われる専用装置を用いて、Galaxy S22 Ultra本体のみで撮影した場合と装置利用時の星空の画質・品質を比較評価してみます。

Galaxy S22 Ultraのカメラ仕様・スペック

Galaxy S22 Ultraの背面には4つのレンズが配置されており、それぞれ以下の仕様となっています。

レンズ 仕様
メインカメラ 10,800万画素
1/1.3″ インチセンサー
F値 1.8
超広角カメラ 1,200万画素
1/2.5″インチセンサー
F値 2.2
望遠カメラ1 1,000万画素
1/3.5″インチセンサー
F値 2.4
望遠カメラ2 1,200万画素
1/3.5″インチセンサー
F値 4.9

Galaxy S22 Ultraのズームでは、倍率によって望遠カメラ1と2を自動で切り替え、最適な画質になるよう撮影されます。Galaxy S22 Ultraのズームは超広角側0.6倍→デジタルズーム併用最大100倍までズームアップ可能です。

マニュアルモード(プロ)で撮影する場合、どのレンズを使うかユーザーが自由に選ぶ(UW(超広角)/W(広角)/T(望遠)/ST(超望遠))ことも出来ます。

Galaxy S22 Ultra 超望遠レンズの星空作例

Galaxy S22 Ultraを利用して撮影した、星空撮影の作例を比較していきましょう。

今回の撮影場所は都心部であるため、あまりきれいな星空を撮れる環境ではありませんでした。肉眼では1~2等星くらいの明る星以外はほとんど見えないような状態で、どのくらいGalaxy S22 Ultraで撮影が出来るのか試してきました。

まずは三脚を利用+Galaxy S22 Ultraの10倍ズーム選択+ナイトモードで自動撮影した場合です。


ナイトモードで自動撮影した場合、星を2個確認出来ました(色調加工・トリミング無し)。中央付近の白い星はアルタイル、その左上の黄色の星はタラゼドという星(のはず)です。

ナイトモードを使うと手持ち撮影でも手ぶれ補正を行い、キレイな夜景やライトアップを撮影出来ます。今回の条件では撮影時間は8秒・ISO 1600に設定されています。

しかし、Galaxy S22 Ultraのナイトモード(自動)撮影では、撮影設定画面で10倍を選択しても実際に使われるレンズは3倍用のレンズ(F値2.4)であり、10倍用のレンズは使われない場合があります。「10倍」を選んだ場合には状況によって10倍レンズ利用または3倍レンズを使ってデジタルズーム処理がされる仕様となっているようです(撮影時にはどちらの望遠カメラが使われているかはわからず、撮影後のファイル情報から判断可能)。

今回の星空撮影において、ナイトモードによる10倍自動撮影では3倍レンズが使われていました。10倍のレンズより3倍のレンズのほうが明るく撮影が可能であるため、星空撮影という暗い環境では3倍レンズが選択されるようです。

3倍のズームレンズは他社のスマホ・低価格スマホでも珍しくないため、Galaxy S22 Ultraの本領とはいえません。そこで、次はマニュアルモードにてST(Super tele)を指定して撮影してみました。

Galaxy S22 Ultraプロモード+10倍レンズ星空撮影

次はGalaxy S22 Ultranにてカメラの撮影モードを「プロ」(マニュアル設定)にして、10倍ズームレンズに固定して同じ場所を撮影してみました。

撮影時間を30秒・ISOを40・フォーカスをマニュアルで設定したところ、約4個の星が映りました。自動撮影でも映った一等星のアルタイル+三等級のタラゼドのほか、アルタイルの下にXi Aquilae(わし座 クシー星)と右下にアルシャイン?らしき星がほんのり見えます。

しかし、プロモードではナイトモードのような手ぶれ補正加工が効かないため、地球の自転によってブレて撮影されました。

この自転による軌跡を無くすために使うのが赤道儀(Equatorial mount)です。

Galaxy S22 Ultraを赤道儀に乗せてみる

今回の星空撮影のために用意したのは、Vixen(ビクセン)というメーカーのポータブル赤道儀「ポラリエ」です。

Galaxy S22 Ultraをホルダーではさみ、それを自由雲台に固定して赤道儀に接続して使います。

Galaxy S22 UltraはSペンを内蔵しており、カメラのリモコンシャッターとして使うことが出来ます。これが非常に重要で、リモコンを使うことでスマホのブレを抑える事ができます(画面をタッチしてシャッターを切ると、そっと触ったつもりでも手ブレが発生するため)。

Galaxy S22 Ultra以外のスマホでもタイマー撮影を使ったり、別の方法でシャッターを切る(iPhoneならApple Watchをシャッター代わりに使ったり出来る)方法はありますが、Galaxy S22 UltraならいつでもSペンを一緒に持ち運ぶことになりますので、いざ星空撮影をしたいときにリモコンを忘れた!なんてことにはなりません。

すでにいくつかの理由は前項までに解説していますが、もう一度ズームレンズ(スマホおよび一般的なカメラでも同様)で星空撮影が困難な理由を解説しておきましょう。

スマホやデジタルカメラで暗い場所を撮影するとき、写真を明るくするための設定として

・シャッタースピードを長くする(光をたくさん取り込むため)
・ISOを高くする(写真の感度を上げる)

この2種類を調整することになります(一般的なカメラレンズの場合、絞り(F値)をより開放する、という設定もあります)。

星空を撮影する場合において、シャッタースピードを長くしてしまうと前項で説明した通り星が動いてしまうため、専用の機器(赤道儀)を使わない限り、あまり長いシャッタースピードを確保することが出来ません。星が動かない範囲でシャッタースピードを短めにすると、今度は明るさが足りずに星が少ししか映らなくなります。

Galaxy S22 UltraではISO(感度)をマニュアルで変更することにより、高感度で明るい写真にすることは可能ですが、感度だけを強引に上げてしまうとノイズが大きくなり、キレイな星空写真にはなりません。

特にGalaxy S22 Ultraの10倍望遠レンズはF値が4.9の暗いレンズ(F値は大きいほど暗い)+センサーも小さいため、シャッタースピードを短い間まま撮影+ISOを高く設定しても星空写真は見るに堪えない画質になります。

そして、ズームレンズを利用する場合には、星を拡大して撮影する→わずかな星の動きが大きく見えることになるため、短めのシャッタースピードでも星が動いてしまい、点状態のキレイな星座を撮影出来なくなります。

この星の動きによる影響はスマホのみ・デジタルカメラ本体の設定を変更して打ち消すことは通常不可能です。Galaxy S22 Ultraのナイトモードを使っても補正はしきれないことは既出作例の通り。よって、普通は星空撮影にズームレンズはあまり用いられません。どうしてもズームレンズを使いたい・長いシャッター時間で撮影したい場合には、赤道儀は不可欠です。

赤道儀あり/無しの比較

赤道儀を利用してGalaxy S22 Ultraを星の動きに合わせて自動移動させることで、以下のように星の映り方が変わります。

赤道儀無し 赤道儀あり

*画像をタップすると拡大出来ます。

どちらも30秒のシャッタースピードで撮影しています。画像を小さいまま見ている場合は赤道儀無しでも2個の星(アルタイルとタラゼド)が写っているようにしか見えないかもしれませんが、写真を拡大すると差は歴然です。

10倍の高倍率ズームを使うと、わずか30秒の間でも星がこんなに動いてみえるのです。あえて星の光が流れるように撮影するテクニック・表現もありますが、星座を綺麗に撮りたい・点で撮りたい場合にはGalaxy S22 Ultraのナイトモード/赤道儀無しのプロモードでは物足りません

Galaxy S22 Ultraの10倍ズームレンズ指定・プロモード・赤道儀を利用して撮影すると、以下のようにたくさんの星が映りました(ぜひタップして拡大して見てください)。


自動撮影のナイトモードでは2個しか見えなかった星が、何十個も写っています(明るさ・コントラスト調整済み)。肉眼ではほとんど見えない暗めの星も、Galaxy S22 Ultraの10倍ズームレンズと赤道儀を使った長時間の撮影時間を確保することで、よりきれいなズームアップの星空写真を撮ることが出来ます。

今回は街明かりによる光害があるためこの程度の星空写真になっていますが、もっと空気が綺麗・澄んだ夜空ならさらにキレイな星空が映るはずです。

Galaxy S22 Ultraを使ってとことん綺麗に星空を撮ってみたいという人は、「赤道儀+プロモード」での撮影にチャレンジしてみることをオススメします。

Vixen ポラリエ」/購入時価格約4万円
クイックシュー付き自由雲台」/購入時価格約2,400円
FOTOPRO 中型三脚 X4I-E

自由雲台/三脚は一般的なカメラ用であればどんなものでも接続できるはずです。スマホホルダーは三脚に固定できるネジ穴があるタイプならOKです。

広角撮影なら赤道儀無しでも星空が撮れる

今回のテーマは「望遠カメラで星を撮る」でした。ナイトモードを使った自動撮影だと星があまり映らない・プロモードを使って撮影時間を長くすると自転の影響で星が流れてしまうために専用装置(赤道儀)を使いました。

しかし、もし「ズームレンズでなく広角レンズだけで星空を撮れれば良い」というのなら、赤道儀は無くてもかなり綺麗に星空を撮れます。

上記はGalaxy S22 Ultraと同じ仕様の1億画素の広角レンズを搭載したGalaxy Note 20 Ultraにてプロモード・30秒のマニュアル撮影をしたものです(画像はブログ用に圧縮しています。オリジナル画像はもっとノイズが少なく撮影出来ています)。

風景を含めた星空・大きな星座全体を撮影する場合には10倍レンズでは画角が狭すぎるでしょう。広角レンズの場合は30秒のシャッター時間でも自転の影響が小さいため、赤道儀を使わずそのままマニュアル撮影すればOKです。

[購入レビュー]Galaxy S22 Ultra10倍ズームカメラで星空を綺麗に撮る方法-作例