今回は「プリペイド格安SIM」を一時帰国用に使うと、どのくらいの費用でどの程度ネットに使えるのか、ということを解説します。

具体的な金額の前に、まずプリペイドSIMの一般的事項について列挙しておきます。

プリペイドSIMの特徴

・利用開始時に審査が不要
・購入時に所定のデータ通信容量が含まれている(500MB~100GBまで多様)
・データ容量の単価は割高

プリペイドSIMの大きな利点は、なんといっても「プリペイド=料金前払い」であることです。通常プリペイドSIMでは購入時以外には一切追加料金は掛かりません(ウェブを通じての有料サービスの利用は除く)。そのため、使いすぎて料金請求が高額になることがなく、モバイルインターネット利用の初心者・一時的な利用者に向いています。

一般的な携帯電話・スマートフォンの契約では各個人情報をサービスに登録し、審査を経て契約を結びます。でも、プリペイドSIMの場合は通常審査はありません。利用開始前には開通手続きが必要ですが、SIMを入手後比較的すぐに利用開始できるのもメリットです。

また、プリペイドSIMでは、通常データ通信のみが可能です。音声通話は出来ません(LINEなどのデータ通話アプリを介すものは可能)。通話が必要な場合にはソフトバンクのプリペイドサービス「シンプルスタイル」を検討しましょう。

主要なプリペイドSIMサービス

MVNOが提供するプリペイドSIMは複数種類があります。繋がるネットワークはドコモの回線がほとんどですが、それぞれ実際の通信速度品質・料金・利用できるデータ容量が大きく異なります。

IIJは格安SIM業界の大手サービスの一つ。ユーザーの満足度が非常に高く、判り易い料金体系と他社に比べて豊富なサポート・オプションがあります。現在は100万回線を超える利用数があります。プリペイドSIMは2GBのみですが、追加チャージが可能です。

iij-pre

OCNモバイルONEのプリペイドには、3種類のサービスがあります。1つは「1GBの容量が使えるカード」、1つは「1日50MBまでの通信を20日使えるカード」、そして「1日30MBまでの通信を30日使えるカード」です。いずれのパッケージも、あとから専用の追加容量パッケージを購入すると、容量を増やすことは可能です。

b-mobile(日本通信)は格安SIMが登場した初期に活躍したサービスです。プリペイドSIMの種類が豊富で、料金は他社より割安となっています。面白いところでは「1年100GBの通信が出来るb-mobile プリペイドスマホセットが23980円に値下がり!」で紹介したように、100GBもの超大容量プリペイドカードなども売っています。自分に最適な容量・有効期間のSIMタイプを選ぶことで、割高なカードが多いプリペイドSIMの中では比較的安く使うことが可能です。

この他、細かいサービスを挙げ始めるとキリがないくらい種類があります。それぞれ購入可能方法・利用開始方法が微妙に異なりますが、基本的には「前払いで使えるドコモ系データ通信専用SIM」です。

auの回線を使う格安プリペイドSIMは、mineo(マイネオ)が販売しているものが2016年3月時点では唯一のカードです。

プリペイドSIMの料金と利用制限

前項で紹介したように、「プリペイドSIM」といってもいろんな種類があるため、その料金と利用できるサービスが異なります。ここでは各サービスの特徴を少しだけ抜きだし、比較表にしてみます。

プリペイドサービス データ容量 価格* 利用期限** 回線 追加チャージ
IIJ mio 2GB 約4100円 3ヶ月 ドコモ系 500MBから
OCN 1GBタイプ 1GB 約3100円 3ヶ月 ドコモ系 1GBから
b-mobile 5GBタイプ 5GB 約3650円 1ヶ月 ドコモ系 5GBから
b-mobile 100GB
G2 miniスマホ付き
100GB 約2万円 1年 ドコモ系 なし
mineo 1GB 3654円 2ヶ月 au,ドコモ系 なし
Play SIM(So-net) 3GB 約4500円 2ヶ月 ドコモ系 200MBから

*価格はメーカーの小売希望価格(税込み)か、現時点の一般的な市場価格を適当に書いています。
**利用期限は「開通月の○ヶ月後の月末まで」というように、各サービスによって異なりますが簡易表現をしています。

各プリペイドSIMでは、短期間に大量の通信を行うとネットワーク利用の公平性を保つため、という名目で通信速度制限が掛けられることがあります。この制限も各SIMサービスごとに異なり、それぞれの契約プランごとにも異なるため、よく注意が必要です。例えば、b-mobileの5GBタイプは3日間で1GBを超えると速度制限が入ることがあります。100GBタイプの場合は3日で5GBとされています。

プリペイドSIMを使った場合の1ヶ月料金目安:4000円~5000円(端末代金を含まず)

プリペイドでも1GBから100GBまで、さまざまなタイプがあることを紹介しましたが、実際のネット利用ではどの程度のサービスを使えるのか?という目安を各種サービスが用意しています。

例えば「IIJmio」の説明だと以下のようになっています。

2gb-use2GBの容量をスマートフォンで使うと、上記のように結構たくさん使えるようにも見えます。この目安は一般的な利用目的における通信容量を、契約プランで割っただけなので、どのサービスでも同じ「目安」として使えます(あくまで目安、です。実際にこれとぴったり同じ回数・時間のネット接続が出来るわけではありません)。

スマホとパソコンを接続させて使う場合は、もっとたくさんのデータを使うことがあります。管理人は手違いでパソコンの自動アップデートを格安SIMの通信でやってしまい、接続させたほんの数時間後に見たら4GBを一気に消費してしまったこともあります・・・。高画質な動画を見たり、アプリケーションのダウンロード・更新をする場合には多くの容量を必要としますので、データ通信料金が割高なプリペイドSIMを使う場合、パソコンと接続させるときは十分に注意してください。

一時帰国用ネット回線としてのプリペイドSIM

ここからは管理人の主観を交えてプリペイドSIMを「一時的なネット接続の方法」として使う場合の便利なところ・不便なところを説明します。

一時的に日本に滞在する場合、滞在期間がはっきりと決まっている場合はそれぞれのサービスで利用できる期限に注意が必要です。1ヶ月未満の滞在の予定で、1ヶ月だけ使えるパッケージを購入した後に、滞在が延長されて1ヶ月以上になってしまうと期限が切れてネットが使えなくなる恐れがあります。

追加チャージをすることで利用期限を延ばすことも可能なSIMを選ぶことで「ネット接続不能期間」の対策をすることが可能な点は良いですが、一般的な継続契約の格安SIMプランに比べれば追加チャージも割高です。1GBで1000円、2000円という追加料金が発生しますので、よく考えてプリペイドSIMを選ばなくては節約になりません。何度も追加チャージしてしまっては安く済ませるためにプリペイドSIMを選ぶという目的から外れてしまいます。

逆に追加・延長すると割高だから・・・と大きすぎる容量・長すぎる利用可能期間が設定されたパッケージを購入すると、国外へ戻るまでに使いきれず、次に来日するまで残量を残しておくこともまず出来ません(すぐに日本に戻ってくる可能性が高いなら、もうプリペイドではなく通常契約のSIMを買うべきです)。

プリペイドSIMで使えるデータの目安の項でも紹介しましたが、利用目的を「スマートフォンでの日常利用」に限れば、利用頻度の少ないユーザーでは数GBの容量があれば十分とも言えます。IIJ mioの2GBプランが約4000円として、ここには携帯電話のプラン契約事務手数料(一般的には3000円)も含まれていると考えれば、通常契約に比べて初期コストは安いです。

また、もう一つのメリットとしてプリペイドSIMの場合は「契約使い捨て」なので、利用終了後に解約手続きをする手間がありません。一応プリペイドSIMの場合もSIMカードの返却が必要としているサービスもありますけど・・・

まとめ

プリペイドタイプの格安SIMを一時帰国用のネット回線として使う場合、「購入する容量が使用目的にあってるかどうか」または「購入した容量でやりくりできるか」という2点を良く考えて買わないと、利用時にストレスが溜まったり・容量・利用期間延長の追加購入が発生して割高になってしまう可能性があるため要注意です。

また、上記で挙げたプリペイドSIMは「通信用のSIMカードのみ」での販売のため、ネット接続に使うための端末(スマートフォンやモバイルルーターなど)はもちろん別途用意する必要があります。すでに使える端末を持っている場合は問題ありませんが、どんなスマートフォンや携帯でも格安SIMを使えるわけではないため、そのあたりも慎重に選ばなくてはいけません(格安SIMサービスで使える機種は、それぞれのサービスサイトに動作確認一覧が載っていますので事前に確認しましょう)。

以上より、個人的な意見も踏まえて言えば、「プリペイドSIMは一時的なネット接続方法として使えなくも無いが、節約できるとも限らない」というレベルに落ち着きそうです。

日本での一時帰国用にMVNOのプリペイド格安SIMは使えるか?(第1部)