2023年夏モデルのソニースマートフォン「Xperia 1 V」の実機を用いて、最新CPU “Snapdragon 8 Gen2″が発熱するのか・しないのかXperia 1 Vの発熱対策・排熱のための工夫が効果を発揮しているのかどうかテストした結果を公開します。


Xperia 1 V(えくすぺりあ わん まーくふぁいぶ)は2023年6月16日に発売されたソニーのフラグシップ・最上級モデルのスマートフォンです。初代「Xperia 1」(2019)から数えて第5世代のモデルであり、歴代最高の仕上がりだと一部から好評なようです。

一方で、昨今の高価なスマホでは処理性能が高いCPUを搭載している/カメラがキレイ/電池持ちが良いというのは当たり前であり、細かい差はあれど最新モデル・現行モデルの最上位機種ならば、その性能・仕様に不満を感じる人は少ないはずです。

高い性能を持っている、新しい機能が追加されていることはメーカーのCMやホームページを見れば十分に分かります。しかし、実際のユーザーが気になるのは「搭載された高い性能・機能を、長く・ずっと快適に使えるかどうかでしょう。

(発熱で機能停止が頻発した旧型Xperia 1 IV)

Xperia 1シリーズのうち、旧世代のモデルではゲームを遊んだりカメラ撮影をしていると、本体が発熱・過熱状態となり、動作不具合を起こす個体がありました。そのあたりが最新型2023年モデル Xperia 1 Vで改善されているのかどうか、比較しながら解説します。

Xperia 1 Vの発熱対策技術・仕様

まずはメーカーがアピールしているXperia 1 Vの発熱・排熱のシステムを復習しましょう。

(Xperia 1 Vの内部構造)

歴代のXperia 1シリーズで発熱・過熱トラブルが発生していることはソニーも把握しているようで、2023年モデルのXperia 1 Vでは以下の発熱対策が施されました。

前機種(Xperia 1 IV)よりCPUの電力効率を従来比から約40%改善しました。カメラ動作時において消費電力を従来比約20%改善、さらに本体放熱性能として熱拡散シートの体積を約60%拡大

このとおり、Xperia 1 Vでは「CPU変更」「カメラ動作」「熱拡散シート」によって発熱対策をしているとしています。

こんな数字で言われても良く分からない人が多いでしょうから、実際に使って確かめることにしました。

カメラ撮影時のXperia 1 V発熱状況

まず、旧モデルXperia 1 IVの利用時に筆者も遭遇したカメラ撮影時の発熱・トラブルが改善されているかどうかを確認してみました。

テスト条件として厳し目の条件を想定し、

・屋内、室温28℃で静置
・ディスプレイの明るさ最大設定
・4K画質の動画モード
・動画手ブレ補正オン
・タッチ追尾フォーカスオン

このような条件で、Xperia 1 V本体で熱くなりやすいディスプレイ上部の温度を「赤外線放射温度計」を使って追跡しました。

*放射率を0.95固定で測定しているため、以下の温度の数字は現実の温度そのものではない点に注意してください(それなりに近い数字ではあるはず)。

動画の撮影前(ディスプレイを点灯しただけ)のスタート時点で、ディスプレイガラスの温度は30.6℃(室温の温度計は28℃を表示)でした。


動画撮影開始から2分30秒後、ディスプレイは40℃近くまで一気に上昇しました。この時点でパネルに触れてみるとそれなりに熱く感じられ、明らかに体温を超える発熱をしています。

その後、ディスプレイの温度は徐々に上昇しつづけ、15分を過ぎた頃には46℃を超えました。この時点でパネル上部に触れると、長時間は触っていられないくらいまでかなり熱くなっています。

さらに撮影を続けると、20分を超えた時点で47℃まで上昇しました。ガラスパネルを手で触るとかなりの熱を感じます。この時点で「Xperia 1 Vは発熱しない」とは決して言えないレベルだと感じました。

一方で、このあと30分まで連続で撮影し続けたところ、最大温度は45~46℃前後のままずっと推移し、テスト終了時までカメラ機能が止まることなく4K動画を長時間撮影可能でした。ちなみに30分の4K動画のファイルデータ容量は15GBを超えていました。

Xperia 1 IVで同様の実験をした結果では、20分に到達する前に「本体の温度が上昇したため、一部の機能が使用できません」とエラー表示が出ていました(ディスプレイの温度表示は46℃前後)。

このことから、Xperia 1 Vではカメラ撮影時に発熱をしないわけではないものの、システムの調整・ハードの改善により長時間の撮影が可能/機能停止のリミッターを上げているようです。

Xperia 1 Vを手で持って撮影しているとかなりの熱を感じるため、真夏時・4K動画の連続撮影をしたい場合は、自撮り棒・スマホホルダーを三脚に取り付けて、本体を触らないようにすれば長時間撮影が出来るでしょう。

なお、Xperia 1 Vにはさらに発熱・電池消耗を抑えて撮影するための「長時間撮影設定」が出来る機能があります。

メニューから「長時間撮影ガイド」へ移動し、”一括設定”を行うことで、発熱・電池消耗が大きな「手ぶれ補正」/「オートフォーカス」/「ダイナミックレンジ」を省電力なモードへ切り替えることが出来ます。もし過酷な条件で撮影をしていて発熱・電池消耗でエラーが出る場合は、長時間撮影モードを使ってみると改善が期待できます。

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Xperia 1 Vゲームプレイ時の発熱/Antutuスコア

続いてXperia 1 Vで高負荷が掛かるゲームプレイ時を想定し、ベンチマークアプリ「Antutu Benchmark」を連続で動作させつづけ、発熱を確認しました。

動画撮影時と同じ温度計でディスプレイ表面温度を測定しました。今回は室温24℃→ディスプレイガラス温度26℃の表示からスタートします。

今回はAntutu Benchmark ver9系を使っています。2023年6月時点でver 10が出ていますが、数値測定方式が変わっているため数字の比較は出来ません(AntutuアプリはリスクアプリとしてGoogleから排除されています。今回はテストとして利用しており、通常利用は推奨されません)。

測定開始から8分弱の時点で、ディスプレイ温度は38.6℃まで上がりました。4K動画撮影時に比べて穏やかな温度上昇です。

ベンチマークの測定が2回分終了した時点、約21分経過時でディスプレイ温度は42.5℃まで上がりました。

このあとベンチマーク6回測定終了時(連続1時間の動作)まで、本体温度は42~43℃のまま推移し、それ以上温度が上がることはありませんでしたのでテストを終了しました。

ディスプレイパネルを実際に手で触って確かめたところ、温度計でも表示されていた通り、4K動画撮影時(46~47℃)よりも全体的に発熱は抑えられており、異常な過熱はありませんでした。

スマホで熱くなりやすい本体前面/上部が40度を超えている場合でも、本体の下部/背面はそこまで熱くならず、37~38℃程度で収まっているタイミングもありました。また、Xperia 1 Vは背面が細かな凹凸があるパネルが採用されており、触感として発熱を感じにくい構造になっています。

また、連続でのゲームプレイ時にパフォーマンスの低下も多少ながら観測されました。1時間の連続Antutuベンチマークのスコアは以下のように推移しています。

動作時間(約) Antutuスコア
(ver9.x 実測値)
10分後 119万点
20分後 101万点
30分後 98万点
40分後 93万点
50分後 93万点
60分後 94万点

上記の通り、動作を続けるうちに若干処理性能が低下しており、42~43℃前後に発熱している状態ではパフォーマンスが2割程度落ちました。連続のスマホ動作により過熱状態にならないよう、パフォーマンスをあえて少し落とす処理は良く見られるシステムです。

今回のテストでは1時間を超えてもベンチマークスコアは90万点を超え続けており、高負荷のゲームプレイアプリでも長時間遊ぶことが可能であると期待できる結果でした(個々のアプリ動作・安定性はメーカーにお問い合わせください)。90万点台という数字は、先代Snapdragon 8 Gen 1の標準的なパフォーマンスと同じくらいです。

Snapdragon 8 Gen 2の最高パフォーマンスを維持したい/手で触る部分が熱く感じてしまう場合は、Xperia 1 V用のゲーミングギア「Xperia Stream」を利用できます。

Xperia StreamはXperia 1 V/IVに装着可能なファン付きインターフェイス拡張アクセサリーです。

背面に大きなファンが付いており、冷却効率をアップ・発熱で熱くなるボディフレームを直接触らず操作が出来るため、ゲームをガチでプレイしたい/eスポーツ用としてXperia 1 Vを買う場合は、合わせて入手するのも良いでしょう(ドコモではXperia Streamは別売りです)。

*今回の発熱テスト・温度測定は当サイトが独自で行っており、専用機器・環境で評価したものではありません。発熱・動作状況はスマホの設定や環境によって大きく変化することがありますので、上記の結果はあくまで参考程度にご利用ください。公開した数値・結果・内容を保証するものではありません。

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[Xperia1V実機レビュー]Snapdragon8Gen2は発熱しない?4K動画撮影/ゲーム長時間利用時熱測定-旧型からの排熱改善