KDDIは2017年8月1日より、auの販売するスマートフォン・携帯・タブレット・iPhoneなどに掛けているSIMロックに関する解除条件を順次変更することを6月30日に発表しました。
これにより、au端末を海外や国内の格安スマホサービス(格安SIM,MVNO)で利用する場合の運用方法に大きな変更が生じる予定です。本ページでは現状で明らかになっている変更ルールの解説と現状のSIMロック解除条件→今後のSIMロック解除ルーる変更時で生じうるトラブル・注意点・運用方法について詳しく解説していきます。
本稿で記載する内容は2017年7月3日時点で公開されている内容およびKDDIのサポートに問い合わせて得られた情報に基づいています(2018年1月時点の仕様も追記済)。実際のルール変更の仕様・例外的運用ルールの有無(システムの不備により本来出来ないはずのことが出来てしまう、正規以外の方法で手続きを行うなど)・解釈の違いによる実情との誤謬がありえます。適用前にルールが変更されることもありますので、SIMロック解除の実際の運用は必ず各自で最新情報を公式サイトで確認し、自己責任にて行って下さい。
auスマートフォンにおけるSIMロック解除とは?
auから発売されたVoLTE対応スマホ・ケータイ・タブレットは、SIMロックが掛かったままでは通常auと直接契約をした回線でしか使えないように制限が掛けられています(後述する旧モデルの場合はその限りではありません)。
SIMロック解除とは「au以外が発行する他社のSIMカードでの通信・通話機能に対する制限を外す」ことであり、必ずしも「他社のSIMカードで通信・通話機能が使えるようになる手続き」ではないことを理解しておきましょう。
auとその他の通信会社では利用する周波数帯が異なるため、他社回線でau用に作られたスマートフォンや携帯が万全の状態で使えるかどうかは保証されていません。接続自体は出来ても電波受信強度が弱かったり、通信速度が遅かったりすることもあります。また、auの各サービスをそのまま使う(auスマホに入っていたau関連のアプリを使う)ことが出来るかどうかも保証されなくなります。
au端末をロック解除する目的の多くは海外や異なる通信方式での利用というより、auのネットワークを利用したMVNOが提供する、いわゆる「格安SIMサービス」で利用出来るようにすることでしょう。au系格安SIMサービスにおいては、やはりサービス事業者・KDDI本体が100%の動作を保証することはありませんが、各提供業者が動作の確認を行っていることはあります。
ショップ名 | 取り扱いサービス | 動作確認リスト |
---|---|---|
IIJmio | docomo,au系 | サイトに記載あり |
mineo | docomo,au系 | サイトに記載あり |
UQ mobile | au系 | サイトに記載あり |
例えばmineoでは以下のような動作リストが提供されています。
auのVoLTE対応(VoLTE専用機種)を格安SIMサービスで使う場合、SIMロック解除がされていないと通信・通話などの機能が使えないことが知られており、「格安SIMサービスを使うならau端末のSIMロック解除をしてから」という準備が比較的新しいauスマートフォンをau系MVNOで使う場合の大前提となっています。
2017年時点で販売されているほとんどのスマートフォン・タブレット・ケータイは先述の通りSIMロック解除をしないと格安スマホサービスで使えない「au VoLTE」専用になっていますが、VoLTE端末が普及する前に発売された旧モデルのスマートフォンをLTE SIM(非VoLTE)のみに対応したカードで使う場合はロックの解除は不要でした(ここでは詳細は省きますが、テザリングなどすべての機能がそのまま使えるというわけではありません)。
SIMロックが必要ないスマホは「2文字のメーカーを表す英字+L」から始まる型番の付いたスマートフォンシリーズであり、例えばソニーのXperia Z3 (SOL26)や、富士通のarrows Z(FJL22)といった機種を用意すれば使える組み合わせもあります。また、auが発売したiPhoneも非VoLTE SIMであればそのまま使えます。
ただし、この場合も「au VoLTE SIM」しか発行していないIIJでは使えず、古いモデルはそもそもSIMロック解除に対応していないため、ドコモやソフトバンクといったau系以外の通信会社での利用は不可能であることに注意が必要です。詳しくはMVNO各社に問い合わせてください。
関連記事:mineoのau回線で使えるスマホ・使えないスマホ(白ロム)の見分け方
現状のSIMロック解除ルール(2017年7月時点)
今後のルール変更を学ぶ前に、現状のSIMロック解除に対して再確認を行っておきましょう。
auのSIMロック解除条件は、以下の3点をすべて満たしていることとあります。
- 2015年5月以降に新たにauで発売されたSIMロック解除機能対応のスマートフォン/タブレット/Wi-Fiルーターなどであること。SIMロック解除対象機種一覧のご確認はこちら
※2015年4月23日発売の「Galaxy S6 edge SCV31 」についても、SIMロック解除の対象となります。 - 機種購入日から181日目以降であること。
※ご購入日当日を「1日目」とします。
※上記の条件を満たしている場合でも、故障がある場合は修理完了後のお手続きとなります。 - ネットワーク利用制限中のau携帯電話でないこと。- au SIMロック解除のお手続きより
1点目は機種の発売日に関する要件(機種を「購入した日」ではなく、auが発売した日です)、2点目は購入日からの経過日数、3点目はいわゆる「赤ロムではないこと」が条件となっています。
SIMロックの解除方法は、
・パソコン、スマートフォン(手数料無料)
・auショップの窓口(手数料3300円)
の2つがあり、前者はauの契約をしている端末購入者であればau IDでログインし、手続きを実行することが出来ます(解除出来るのは該当のIDで購入履歴が確認出来る機種に限る)。後者は端末をauから購入した本人でなくても解除が可能であり、ドコモ・ソフトバンクと違って現行のルールでは中古白ロムのロック解除が誰でも出来るのが特徴でした。
ではいよいよ、2017年のSIMロック解除ルール変更部分についての解説に入ります。
2017年8月以降のルール変更点
auが発表したルールは以下の通りです(SIMロック解除の受付条件を一部変更)。
それぞれの注意事項が6項目あります。
*1 (分割・一括) 当社の回線契約を解約済みのお客さまは、解約日から100日以内の場合、SIMロック解除の手続きが可能です。2017年12月1日適用開始。
*2(分割・一括) 契約者ご本人さまの購入履歴がある場合のみお申し込みいただけます。2017年12月1日適用開始。*3(分割のみ) 対象回線におけるSIMロック解除実績があり、かつ前回のSIMロック解除受付日から101日目以降である場合は、機種購入日から100日以内の場合でもSIMロック解除の手続きが可能です。 2017年12月1日適用開始。
*4(一括のみ)機種代金を一括払いされた場合であっても、au購入サポート等(ご購入機種の継続利用および適用条件の継続契約を条件として、機種のご購入代金の一部を当社が負担する施策)が適用されている機種については、2018年1月以降(予定)、機種購入日から100日以内の場合はSIMロック解除の手続きが行えません。*5(一括のみ) 2017年8月1日から2017年11月30日までの期間は、機種購入日から101日目以降より手続きが可能です。
*6(分割・一括) 対応機種を既にご購入されたお客さまにおかれましても、変更後の受付条件が適用されます。
SIMロック解除のルールは8月1日・12月1日の二段階によって行われます。また、追記部分の変更により大きく手続きが変わる点もありますので、詳しく見ていきましょう。
まず、この変更の対象となるのは端末購入日に関わらず、ルール変更前後で購入・契約した端末も一律で実施日から適用条件が変更されます。対象の機種としては「SIMロック解除が可能なすべての機種」ということになります。
ただし、上記の実施時期が8月1日と12月1日に分かれているように、2017年中のロック解除条件は時期によって出来ることが変わってきます。この点を良く理解しておく必要があります。
「対象となるお客さま」という表記に対し、「分割払い」・「一括払い」の2パターンですべての機種購入が含まれ、かつ
注意事項6:対応機種を既にご購入されたお客さまにおかれましても、変更後の受付条件が適用されます。
の但し書きにより、変更日前後の購入済み端末・これから購入する端末もすべてが一律で対象範囲に入ると解釈されます。中古端末は現状のルールのまま(誰でもSIMロック解除が出来る)ということにはならないでしょう。
ロック解除までの日数は3段階(8/1~11/30の期間と、12月1日以降、2018年1月以降)に分けて考えると理解しやすいです。購入のパターンとして、auの公式アナウンスには「分割購入」「一括購入」の2種類がありますが、ここでは便宜上「一括購入(購入サポートを使わない場合)」「購入サポートを適用した場合」を追加して、図にしてみたいと思います。
購入種別 | 8/1~11/30 | 2017/12/1~ 2018/1/15まで |
1/16~ |
分割支払い時 | 101日目以降 | ||
一括購入時 | 101日目以降 | 即日解除可能 | |
購入サポート適用時 | 101日目以降 | 即日解除可能* | 101日目以降 |
ここでちょっと興味深いのは、*を付けた購入サポートを適用した一括購入をした端末の2017年12月の取り扱いが特殊である点です。
ニュースリリースには、
*4) 機種代金を一括払いされた場合であっても、au購入サポート等(ご購入機種の継続利用および適用条件の継続契約を条件として、機種のご購入代金の一部を当社が負担する施策)が適用されている機種については、2018年1月以降(予定→1/16変更で確定)、機種購入日から100日以内の場合はSIMロック解除の手続きが行えません。
という注意書きがあり、購入サポート適用時のルールだけは2017年12月ではなく、2018年以降に始まる予定とされています。一方、12月1日以降は一括購入をしていれば支払いが確認できた日から即ロック解除が可能になるとされていますので、この12月1日~2017年12月31日だけ購入サポート適用端末の特異期間になるように読み取れます(→その通りの結果になりました)。
*KDDIに問い合わせ済みです。2017年7月時点でのルールではこのようになるというサポート回答でしたが、実際の適用時期にどうなるのかは分からないということです(普通に考えるとこの特異期間は塞がれ、購入サポートを適用すると100日以内のロック解除は出来ないようになりそうです。ドコモではそのようになっていますので)。
但し書きの3項目に当たる条件として、2017年12月1日以降であれば過去のSIMロック解除実績により端末購入から100日以内でも解除できる特例があります。
対象回線におけるSIMロック解除実績があり、かつ前回のSIMロック解除受付日から101日目以降である場合は、機種購入日から100日以内の場合でもSIMロック解除の手続きが可能
以上のルールにより、機種変更をしてすぐに海外や他社回線で使いたいという事情がある人の救済が行われます。解除実績は回線毎の判定になるため、新規・MNP契約で回線を追加した場合には適用されません。
auにてスマートフォンを購入し、ロック解除をせずにauの契約を解約した場合、以下の特例によって100日以内であれば解除を受け付ける予定とされています。
(分割購入・一括購入の両方対象)当社の回線契約を解約済みのお客さまは、解約日から100日以内の場合、SIMロック解除の手続きが可能です。2017年12月1日適用開始。
回線解約をしてからロック解除をする場合、分割購入と一括購入(購入サポートを使わない場合)のロック解除可能変更ルールが複数絡みあってきます。例えば、
・2017年8月23日に分割で購入(12月1日に101日目を迎える購入)し、即日回線を解約した場合 → 解約日から100日を超えるため、SIMロック解除不可
・2017年8月23日に分割で購入し、翌日回線を解約した場合→2017年12月1日のみロック解除可能
・2017年8月22日に分割で購入し、即日回線を解約した場合 → 2017年11月30日のみロック解除可能
・2017年8月25日に一括で購入し、即日回線を解約した場合 → 2017年12月1日から12月2日までならロック解除可能
・2017年8月26日に一括で購入し、即日回線を解約した場合 → 2017年12月1日から12月3日までならロック解除可能
・2017年11月30日に一括で購入し、即日回線を解約した場合 → 2017年12月1日から2018年3月9日までならロック解除可能
このようになるはずです(「解約日から100日」を解約日を含めて計算した場合。手続きのタイミングで細かい日数計算がずれる可能性があるので注意)。
なお、変更前のルールでは購入後181日目以降からロック解除が可能となっています。
購入・解約のタイミング次第で白ロム(購入者本人以外)のロック解除が可否がシビアなスケジュールになる可能性がある点に注意してください。
[2018年1月追記]
au端末購入サポートを適用時に101日経過までロック解除が出来なくなる変更が2018年1月16日開始予定とアナウンスされました。
au購入サポートなど(ご購入機種の継続利用および適用条件の継続契約を条件として、機種のご購入代金の一部を当社が負担する施策)が適用されている機種については、機種購入日から100日以内の場合はSIMロック解除の手続きが行えません。(2018年1月16日以降適用開始予定)
これにより、2017年12月1日~2018年1月15日までの期間だけが購入サポートによる一括購入→即ロック解除が出来る特異期間となり、16日以降は出来なくなるので注意してください。
2017年8月1日からの条件変更により、従来のロック期間が180日→100日まで一気に短縮されます。
例えば、2017年4月23日に分割・一括で購入した端末は2017年8月1日からロック解除が出来るようになるはずです。同様に4月22日以前に購入された端末はすべて8月1日のタイミングに短縮されてSIMロック解除が可能になります(ネットワーク制限中の端末を除く)。
auから端末を購入した本人ではなく、中古品・白ロムを解除できる期間・条件も変更されます。
*2(分割・一括) 契約者ご本人さまの購入履歴がある場合のみお申し込みいただけます。2017年12月1日適用開始。
本項目は分割・一括払い両方のパターンに当てはまるため、SIMロックが掛かった白ロムをMVNOで使いたい場合は2017年11月30日までにSIMロック解除可能日を迎えるものを購入する、12月1日以降に購入者本人によってSIMロック解除手続きを実行してもらうことが必要になります。SIMロック解除手続きが間に合わなかった場合に大変困ったことになりえるので、今後の白ロムの取り扱いには十分に注意してください。
6:2017年8月以降発売モデルのMVNO利用
国内のスマートフォン・携帯電話販売において、2017年8月以降に発売日された機種ではSIMロック解除をしない状態でも、同系列のMVNOでは通信が出来るように仕様変更されている端末があります。
例えば2017年9月発売のau向けiPhone 8, iPhone8 Plusや11月発売のiPhone Xでは、APNプロファイルさえ導入すればSIMロック解除不要でmineo aプラン(VoLTE SIM)での利用が可能とされています。
実際にSIMロック未解除状態での格安SIM回線利用が可能かどうかは各MVNOの動作確認リストを参照ください。
まとめ
以上、auのSIMロック解除ルールに関する2017年7月時点で読み取れる情報・確認出来た内容でした。一部ユーザーにとって不利になりえる変更が含まれているため(中古端末のロック解除まわり)、本当にこのままの解釈の内容で実施されるか懐疑的な点もあります(問い合わせても不明な点もありました)。複数のルートに確認していますが、情報に誤りがある可能性もありますのでご容赦下さい。
せめてau系MVNOで使う場合にはSIMロック解除不要で使えるようになってくれると状況は大きく変わるのですが、2017年7月時点では確定した情報はありません。これからルールの変更・追加も十分にあり得るため、SIMロック解除が必要になる運用を望む場合は各自で最新の情報を仕入れて行動してください。
・auのSIMロック解除関連情報
・au ネットワーク制限チェックサイト
・au SIMロック解除可否を調べられるサイト(ルール変更以降、使えなくなりました)
白ロムを購入する場合は必ずネットワーク制限の状態・SIMロック解除可能日がいつなのかを把握してから入手するようにしましょう。
通常のau公式回線で端末購入・機種変更を行う場合は「au Online shop」から手続きが出来ます。
また、格安SIMサービスでスマホを使いたいのなら初めからSIMロックが掛かっていないSIMフリースマートフォンも比較的安く買えるようになっています。MVNOがセット販売をしている確実に使えるスマホを買うほうが安全かもしれませんので、どちらが良いのか各自で判断して購入端末を賢く選びましょう。