2020年夏、ソニーは「5G」通信対応の最新フラッグシップモデル「Xperia 1 II」(えくすぺりあ わん まーくつー)および4G機種の「Xperia 10 II」を投入しました。
ソニーのXperiaシリーズは1年に何度もモデルチェンジを繰り返したり、同シリーズのなかでコンパクトモデル/スタンダードモデル/プレミアムモデルを出したり、つい最近発売されたように思われたモデルもどんどん型落ち化してゆく傾向にあります。
頻繁に発売されるXperiaシリーズは、発売時期が近い(発売日のスパンが短い)モデル同士だと同時期に複数のラインナップが店頭に並ぶことになり、ユーザーは旧機種と新機種を購入時に選ぶことが可能になるケースも多く、型落ちしたXperiaスマホが新機種に比べてお買い得になるチャンスも多めです。
特に2019年~2020年にかけて、Xperiaシリーズはau・ソフトバンク・ドコモの大手3携帯会社以外にも提供されるようになり、モデルが一気に増えました。
(UQ mobile初のXperia 8)
一般的に新しいスマホほど新技術が搭載されたり、性能が向上していたりすることもあり価格は高めに設定されます。また、もともと低価格販売用に作られたXperiaもあり、現行モデルのXperiaシリーズの価格は2万円台~10万円以上の高額モデルまで、幅広くなっています。
2019-2020年モデルの新しいXperiaといっても性能・価格はマチマチですので、自分に合うモデルを探す参考用に性能の評価と価格のバランスを詳細に解説します。
2019-2020年モデルのXperia概要
2020年5月時点で発表されている「現行モデル」と言えるXperiaシリーズには、以下のモデルが存在します。
【2020年夏モデル】
・Xperia 1 II auモデル SOG01
・Xperia 1 II docomoモデル SO-51A
・Xperia 10 II ワイモバイルモデル
・Xperia 10 II auモデル SOV43
・Xpeira 10 II docomoモデル SO-41A
【2019年モデル】
・Xperia 5 auモデル SOV41
・Xperia 5 ソフトバンクモデル
・Xperia 5 docomoモデル SO-01M
・Xperia 8 auモデル SOV42
・Xperia 8 UQモデル
・Xperia 8 ワイモバイルモデル
・Xperia 1 Professional Edition
・Xperia 1 auモデル SOV40
・Xperia 1 ソフトバンクモデル
・Xperia 1 ドコモモデル SO-03L
・Xperia Ace 楽天モバイルモデル
・Xperia Ace (IIJ/mineo/OCN/nuroモバイル向け)
・Xperia Ace docomoモデル SO-02L
大別すると2020年夏モデルは2種、2019年モデルは4種です。販売キャリアが違うモデルは一部仕様・プリインストールアプリなどが異なることがあります。
これらのうち、
【5G対応ハイエンド】:Xperia 1 II
【4G対応ハイエンド】:Xperia 1/5
【4G対応ミドルレンジ】:Xperia 10 II/8/Ace
という分類されます。
さらにもう一つ細かく分けるのなら、Xperia Aceは「コンパクトシリーズ」に分けられるでしょう。
Xperiaのコンパクトシリーズには「Xperia XZ2 Compact/Xperia XZ 1 Compact/Xperia X Compact/Xperia Z5 Compact/Xperia J1 Compact 」などの歴代モデルがあります。過去のコンパクトシリーズには性能が高いモデルもありましたが、現行モデルのXperia Aceはハイエンドではありません。
最近のXperiaは数字によるナンバリングされていますが、数字の大小は性能の高さ・機種の新しさを反映していません。Xperia 1よりXperia 5のほうが新しいのですが、Xperia 8はXperia 5の後継機ではありません。Xperia 10は日本で発売されてすらいません。
Xperiaシリーズの機種名と大雑把な「高性能機種/中性能機種」といった分類を把握した上で、それぞれの主なスペックと機能・価格を比較していきましょう。
最新のXperiaシリーズ比較
まずはハイエンドモデルグループを比較しましょう。
モデル/スペック | Xperia 1 II | Xperia 1 | Xperia 5 |
ディスプレイ (解像度) |
6.5インチ 4K |
6.5インチ 4K |
6.1インチ フルHD+ |
縦幅 | 166 mm | 167 mm | 158 mm |
横幅 | 72 mm | 72 mm | 68 mm |
厚さ | 7.9 mm | 8.2 mm | 8.2 mm |
重さ | 181グラム | 178グラム | 164グラム |
電池容量 | 4000mAh | 3200mAh | 3000mAh |
CPU | SDM865 | SDM855 | SDM855 |
メモリー | 8GB | 6GB | 6GB |
ストレージ | 128GB | 64GB | 64GB |
防水/防塵 | 対応 | 対応 | 対応 |
おサイフケータイ | 対応 | 対応 | 対応 |
テレビ | フルセグ対応 | フルセグ対応 | フルセグ対応 |
生体認証 | 指紋認証 | 指紋認証 | 指紋認証 |
ワイヤレス充電 | 対応 | 非対応 | 非対応 |
*詳細なスペック・機能データは各社サイトを参照下さい。
まず、Xperia 1とXperia 1 IIは6.5インチでほぼディスプレイは同じ大きさ、Xperia 5は一回り小さくなっています。
Xperia 1/1 IIは6.5インチという超大型のディスプレイサイズを搭載したモデルとしては、ディスプレイを縦長にして横幅を狭くすることで、ある程度の持ち易さを実現しています。
しかし、一般的なスマホに比べてかなり縦長になっているため、持ち運びやすさを重視したいのなら、両方を使い比べた印象ではXperia 5のほうがコンパクトに感じます。
スマホの処理性能に関わる部分では、Xperia 1とXperia 5はほぼ同等、Xperia 1 IIは2020年モデルらしく最先端へ進化しています。
SDM865のチップは1世代まえのSDM855に比べてCPU/GPU性能が20-30%ほど向上します。「最高性能を体験したい」というのなら、Xperia 1 IIが歴代シリーズ最強であることは間違いありません。
なお、Xperia 1/Xperia 5はドコモ・au・ソフトバンクの3社から、Xperia 1 IIはドコモとauからのみ発売されています(SBでの取扱いはありません)。
続いて下位モデルの3機種を比較します。
モデル/スペック | Xperia 10 II | Xperia 8 |
Xperia Ace |
ディスプレイ (解像度) |
6.0インチ フルHD+ 有機EL |
6.0インチ フルHD+ IPS-TFT |
5.0インチ フルHD+ TFT |
縦幅 | 157 mm | 158 mm | 140 mm |
横幅 | 69mm | 69 mm | 67 mm |
厚さ | 8.2 mm | 8.2 mm | 9.3 mm |
重さ | 151グラム | 170 グラム | 154グラム |
電池容量 | 3600mAh | 2760mAh | 2700mAh |
CPU | SDM665 | SDM630 | SDM630 |
メモリー | 4GB | 4GB | 6GB |
ストレージ | 64GB | 64GB | 64GB |
防水/防塵 | 対応 | 対応 | 対応 |
おサイフケータイ | 対応 | 対応 | 対応 |
テレビ | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
生体認証 | 指紋認証 | 指紋認証 | 指紋認証 |
ワイヤレス充電 | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
ミドルスペックの3機種の場合は、前項で解説したとおりXperia 10 IIとXperia 8がほぼ同じサイズ、Xperia Aceだけが一回り小さなスマホとなっています。
しかし、本体の重量はXperia 10 IIが最も軽く、電池容量も大きくなっています。これはボディの素材やパーツの違いに依る差です。
Xperia 8とXperia AceではディスプレイにソニーのTFTパネルを採用していましたが、Xperia 10 IIは上位機にも使われている有機ELパネルを採用しています。
ソニーはテレビの「ブラビア」ブランドで培ったパネル技術があり、2018年モデルのXperia XZ3から有機ELパネルを採用し始めました。
有機ELパネルを使ったXperiaでは高画質で高精細、高コントラスで美しい映像をスマホ上で見ることが可能です。
今やXperiaだけでなく、iPhoneもPro/Maxシリーズ、Galaxyなど有名メーカーとトップモデルのほとんどは有機ELパネルを採用していると言っても過言ではありません。
その点ではXperia 10 IIはミドルスペックながら有機ELパネルを使ったXperiaとしての価値があるとも言えます(他社でも低価格モデルに有機ELパネルを使っている機種はいくらでもあり、”有機ELパネルだから高級スマホ”という意味ではありません)。
Xperiaシリーズの21:9シネマワイドディスプレイ
今回ピックアップしている2019-2020年モデルの6種類のうち、小型機種のXperia Aceを除く5モデルはすべて「21:9」という特殊な縦長ディスプレイを搭載しています。
(5.8インチのiPhone(上)と、Xperia 1の横画面表示比較)
この「21:9」という比率は映画のスクリーンの比率に近く、ワイドな映画コンテンツを全画面で楽しめる・2つの画面に分割して同時使用するなどの利用方法があります。上記例のように、iPhoneではワイド動画を横にして表示すると上下に黒い帯が表示されますが、Xperiaなら隅まで表示が出来ることがあります(動画自体がワイド表示に対応している場合)。
(21:9マルチウインドウ機能を使った様子)
動画やマップを見ながらSNSをしたり、ネットを見たりとさまざまな使い方が可能です(ただしアプリによって分割表示非対応・一方のアプリが止まることも多々あります)。
これらの「21:9」比率のパネルを体験したいのなら、Xperia Ace以外の1/5/8/10II/1 IIのいずれでもほぼ同じことが出来ます。
ただし、上位モデルと下位モデルでは、処理性能に大きな開きがあることも確かです。
Xperia 8とXperia Aceに搭載されたSnapdragon 630というチップは、軽いアプリならスムーズに動きますが、3Dアニメーションを多用したゲームコンテンツなどは、動きが鈍くなると感じられることがあります。
また、2020年モデルのXperia 10 IIに搭載された Snapdragon 665では、SDM 630に比べると3~4割ほどの性能アップをしています(antutuベンチマークテストスコアで17-18万点 vs. 12-13万点)。
しかし、性能がアップしたといってもSDM665は低価格向けモデルの範疇であり、上位陣のSDM855/SDM865とは大きな隔たりがあり、最新のSDM865はSDM665の2~3倍の処理能力を誇ります。
あらゆるゲームを快適に遊びたいという目的があるのなら、Xperia 1/Xperia 5/ Xperia 1 IIの上位モデルを選ぶべきです。
Xperiaシリーズの価格比較
*2020年5月25日時点、機種変更価格(一般的に適用される割引のみを考慮)。
販売元 | Xperia 1 II | Xperia 5 | Xperia 1 | Xperia 10 II | Xperia 8 | Xperia Ace |
au | 133,600円 | 78,100円 | 89,580円 | 49,990円 | 28,145円 | — |
SB | — | 91,440円 | 販売終了 | — | — | — |
docomo | 123,552円 | 76,912円 | 販売終了 | 未定 | — | 49,896円 |
楽天 | — | — | — | — | — | 54,800円 |
ワイモバ | — | — | — | 46,800円 | 36,000円 | — |
UQ | — | — | — | — | 35,640円 | — |
(各税込み。新規やMNP向けの割引、クーポンやキャンペーン価格などについてはそれぞれのサイトで確認してください。特に「楽天モバイル」では新プランUN-LIMITセットで大きなポイント還元があります)
2020年5月時点で最も安く設定されているのは、旧モデルかつ性能も低めだったXperia8です。au・UQモバイル・ワイモバイルでおよそ3万円程度となっています。
一方、5GスマホのXperia 1 IIは12万円~13万円という超高額です。4GモデルのハイエンドXperia 1/Xperia 5に比べても飛び抜けて高いことが判ります。
Xperia 1 IIのau料金プランをセットにした場合、5Gプランで大容量通信を使う前提の見積もりをすると、余裕で月額1万円以上の維持費が算出されることもあります。
一方、楽天モバイル(MNO)だと今は1年間基本料金無料キャンペーンなどもやっており、端末料金+維持費で比較すると圧倒的に他社より安くなります。
楽天モバイルにはXperiaシリーズはAceしかありませんが、他のAndroidスマホも動かないわけではありません(楽天モバイルの非正規端末動作状況についてはこちら)。
キャンペーンや値引きでXperiaシリーズも上記価格より安く買えるチャンスはありますので、性能と価格を良く比較して「高くても最新機種を買う価値があるか」・「不必要に性能が高いモデルを選ぶ意味があるのか」を各自で判断してみましょう。