天体観測・星空撮影のために、星の動きに合わせてカメラや望遠鏡を回転させる機器「赤道儀」を、とにかく安く・お手軽に使ってみたい人向けのおもしろアイテム「ハヤブサMk3」を買ってみたのでレビューします。
一般的な写真撮影カメラ用の赤道儀はモーターが組み込まれており、自動で星を追尾することが出来る製品がカメラアクセサリー・天体望遠鏡関連のメーカーから販売されています。
一方で、今回購入した「ハヤブサMK3」という製品は、手でネジを回してカメラを回転させることが出来る「手動式赤道儀」です。他に類似の製品が日本国内にあるのかどうか詳細は不明ですが、
カメラ専用ポータブル赤道儀として、唯一の手動式
とアマゾンのショッピングページに書かれています。
☆「アマゾン – ハヤブサMk3 ポータブル手動式赤道儀フルサイズ対応」
モーターが組み込まれた電動の赤道儀はけっこう高価で、管理人が別途持っている小型赤道儀「ポラリエ」でも4~5万円程度。天体望遠鏡用の大型赤道儀は10万円をゆうに超える製品もあります。
このポラリエは主にコンパクトカメラ向けの赤道儀であるため、重いデジタルカメラ・大きなレンズには使えません(メーカー記載の最大重量は雲台込み1.5kg)。
重いカメラや天体望遠鏡を乗せられる上位の赤道儀はさらに値段が高くなるため、「初心者だし、めったに使わないモノだから安く買える赤道儀は無いかな?」と探したところ、今回の手動式赤道儀の購入に至りました。
手動赤道儀・ハヤブサMk3の概要と仕組み
手動式のポータブル赤道儀「ハヤブサMk3」は、”星の動きに合わせてカメラを回す”という機能だけを実現する、非常にシンプルなアイテムです。
上記の写真のグレーカラーの金属パーツがハヤブサMk3の本体です。個人による手作り品であるそうで、ぱっと見はただの金属の板を組み合わせただけの無骨な建材破片のようですが、星の動きに合わせて駆動するための原理を反映した、シンプルで合理的な部品なのです。
本体の長さ(最長部位)29センチくらい、重量は745グラム(実測値)くらいです。簡単に壊れる構造ではないため、三脚と一緒に持ち運びをしても安心です。
ハヤブサMk3の本体には時計が付いています。これは時間を見るためのものではなく、秒針の動きに合わせてネジを手動で動かすという目的で付いています(交換用のボタン電池1個が付属します)。
時計の奥にある穴の空いた筒部は極軸合わせ(穴から北極星が見えるように角度を調整する)のためのパーツです。
時計を横から見るとハンドル付きのネジが付いており、このネジを回すことで2枚の金属板がずれるように動き、台座に載ったカメラが星の動きの速度に対応した回転をするという仕組みです。
最大耐荷重について商品ページに記載はありませんが、数ミリの分厚い金属が曲がる・金属のネジが折れるほどの極端な重さでなければ、おそらく一般的なカメラ・レンズならどんなメーカー・大きさのものでも問題なく使えるはずです(三脚・雲台も総重量に対応したものを用意する必要あり)。
星のデジカメ写真撮影に必要なもの
ポータブル手動式赤道儀のハヤブサMk3は”カメラを回転させるだけ”の部品であるため、実際に星の写真撮影をする場合にはカメラ本体以外にもいくつか機器が必要・あると便利です。
ポータブル赤道儀の他に、
カメラ本体
三脚(なるべく頑丈なもの)
レリーズ/リモコン(カメラに触れずシャッターを押すため)
自由雲台(カメラを支えられる頑丈なもの)
方位磁石/傾斜計(北極星を探す/北方向を確かめるため)
これだけあればとりあえず撮影が出来るはずです(北極星を見つけられれば方位磁石/傾斜計は不要。詳しい使い方・組み立て方は商品付属の説明書を見てください)。
ハヤブサMk3は手動式の赤道儀であるため、赤道儀用の電源・電池は不要です。上記のネジ1回転分が1分であるため、最大で20分くらいまで追尾出来ます。ただし、手動でネジをゆっくりと回し続ける必要がありますので、長時間の撮影は忍耐力が必要になります。
実際にハヤブサMk3で撮影した星の比較
実際にハヤブサMk3を利用して90秒間カメラのシャッターを開きっぱなし(バルブ)にして、ネジをクルクルと回して撮影してみました。
焦点距離35mmの広角状態のカメラレンズにて、左が赤道儀あり・右が無し(ネジを回転させずに)でそれぞれ90秒撮影したものです。
赤道儀無しでは線状に映る星が、赤道儀を使うことで点になります(*上記は北極星が見えない場所で撮影したため、コンパスと傾斜計を使ってテキトーに極軸合わせをしました)。
ネジの動かす際にゆっくりと、ぴったり星の動きに合わせるほど熟練すれば200~500mmの望遠レンズでも星の追跡が出来るそうです。
手動式赤道儀を上手く使うためには、
極軸合わせをしっかりと行う(出来てないとネジを回してもズレる)
三脚、雲台をしっかりと固定する(ネジを回す際にブレないように)
ネジをスムーズに、ズレなく回し続ける
望遠レンズ・高倍率・長時間露光になるほどネジの回し方・ブレに対してシビアになります。シャッター時間が短め/広角レンズなら多少回し方・極軸合わせが甘くても気にならないでしょう。
実際に使ってみて感じた見落としがちなポイントは、三脚の設置場所です。三脚を柔らかい地面・芝生の上などにおいてしまうと、ネジを回す際に掛かるほんの少しの力で、カメラごと三脚全体が揺れてしまうことがありました。普段ならまず気にならないほどの揺れでも、望遠レンズを使うとブレが大きくなるため注意が必要です。
非常に原始的な仕組みですが、原理を理解して適切な設定・利用をすれば確かに赤道儀として星空のキレイな撮影が出来そうです。
お金さえあれば高い自動追尾の赤道儀を買うのがお手軽ですが、お手軽に星空撮影をしてみたいのなら、ポータブル手動赤道儀を試してみるのも楽しいかと思います。
デジカメでの撮影用に電動(電池)式赤道儀を買うなら最大5kgまで対応したKenkoのポータブル赤道儀 スカイメモシリーズあたりがオススメです(私もポラリエを持っていなければ、こちらを買っていた)。5キロまで載れば多くのデジタルカメラ+レンズが動かせるはずです。