かつては「SIMロック」や「SIMフリー」といった用語は海外で携帯やスマホを使いたいユーザーくらいにしか知られてい無かったのかもしれませんが、最近では「SIMロック解除義務化」の影響でネットはもちろん、テレビや新聞でも目にすることもある一般的なキーワードになりました。
キャリアで普通に契約して、そのまま国内だけで使うなら今でもほとんどの方に関係ないといえば関係ないのですが、お得に・便利にスマホを活用するためには知っておいたほうが良いこともあります。そんなSIMロックやSIMフリー、というキーワードを中心とした用語や使い道について初心者~中級向けに解説してみます。
SIMロックとは?
SIMフリーの前に、SIMロックの話をしましょう。
日本では、「SIMロック」と一言に言っても、かつては「レベル1(L1)」と「レベル2(L2)」という2種類があったのです。L2ロックは昔のauの携帯電話やスマートフォンで良く掛けられていた制限で、SIMカードと個別端末が直接紐付けられており、一度利用した携帯番号の入ったSIMカード以外を一切受け付けないという鬼仕様でした(ショップに持っていて有料で解除が必要でした)。
このL2ロックが掛かっていない状態を「キャリア間SIMフリー」などということがあります。キャリア間SIMフリーだと、au同士の電話番号の入ったSIMであれば手続き不要で入れ替えられます。2015年現在のスマートフォンはほぼすべてがこの仕様ですね。
ここで、「キャリア間SIMフリー」という状態はあくまで「同じキャリア間」でのみ交換が出来るのであり、海外などで一般的に使われる「SIMフリー」とは異なっていました(ちなみに海外ではSIM FREEよりもUnlockedと書かれている事のほうが多いです。英語ではFREE=無料、というイメージですから)。異なるキャリアで使えないように制限を掛けた状態をもう一つの「レベル1 SIMロック」の状態と表現します。
L1のSIMロックが掛かっていない状態のことを、本来の意味で「SIMフリー」や「SIMロック解除状態」と言います。
2015年5月から始まった「SIMロック解除義務化」
総務省の指導により、日本国内で2015年5月以降に発売されるスマートフォンや携帯・タブレットなどが「SIMロック解除」に対応するようになりました。必ずしもすべての機種がロック解除に対応するわけではないですが、2015年夏モデルあたりのスマホは解除が可能になっています。しかし、買った直後からSIMロックが解除できるのではなく、契約後6ヶ月以上が経過しないとロック解除が出来ないという対抗策をキャリアが出しています。そのため、携帯を買ってすぐに他のキャリア回線で使おうとしても利用できない場合があるため要注意なのです。
SIMロック解除義務化になったのは、「発売日が5月以降」のものに限られます。すでに発売されている機種にはこのガイドラインが適用されないため、例えば2014年9月に発売されたApple iPhone6やiPhone 6 Plusは対象外です。たとえ購入したのが2015年5月や6月になっても、ロック解除は出来ません。
SIMロック解除の方法
すでに各キャリアで解除の方法は案内されていますが、SIMロック解除対応端末の場合はウェブサイト経由で申請すると無料、店頭で手続きをすると事務手数料が有料で掛かるというのが各キャリア共通の仕様になります。具体的なやり方は各キャリアの公式HPを見てください。
▶2019年9月改訂版 ドコモ・au・ソフトバンクのSIMロック解除条件-中古/白ロムのSIMフリー化手順と料金
SIMフリー端末の価値
実利用面でのSIMフリー機種の価値・メリットは「いろんな回線で利用できる」というものなのは説明不要かと思いますが、この価値は「価格」にも反映されてきました。
例えば、日本で最も有名なスマホであるiPhoneでは、Apple StoreでSIMフリーバージョンが販売されています。このSIMフリーのiPhoneは価格がSIMロック(L1)の掛かったバージョンよりかなり高いのです。
一般的にはSIMフリースマートフォンはロックの掛かった端末より1-2割くらい高値で取引されるのが通例でした。特にiPhoneの場合は日本で買っても海外でそのまま利用できたため、人気が高く海外のバイヤーが買い集めて転売されるというニュースになったこともあります。
ドコモで使うだけならドコモのiPhoneを買えば安いのですが、海外に頻度高く出かけて現地の回線を利用したい、SBやauの回線でも利用したいという人にはSIMフリーのiPhoneが便利ということですね。SIMフリー機種を求める人は、この利便さにお金を払っているのです。
ドコモのSIMロック解除
少し話は戻りますが、ドコモでは2015年5月以降の義務化前から、多くのモデルでSIMロック解除が有料ながら対応していました(iPhone,iPadは対象外)。5月以降の発売機種は新ガイドラインに沿って「契約後6ヶ月以上」待たなければロックが外せなくなってしまいましたが、それ以前のモデルであれば現在でもすぐにSIMロックを外すことが可能です。2015年4月23日に発売されたGalaxy S6 SC-03GおよびGalaxy S6 edge SC-04Gが旧ルールに対応した最後のモデルとなりました。
SIMフリーのスマホはどのSIMでも使えるというわけではない
「SIMフリーならどの通信会社でも使 える」という印象がありますが、本当にSIMフリーならどんな機種でも、どのキャリアでも使えるという意味ではありません。SIMカードに制限が掛かって いなくても、利用しているSIMの回線と、端末が対応できる電波(周波数帯)が一致しなければ通話が出来なかったり、データ通信が出来なかったりします。
このあたりはスマホが使う周波数帯のことを勉強してから考えましょう。
参考記事:MVNO,SIMフリースマホのドコモ用LTE周波数帯(band)一覧
SIMフリーとau回線
一般的なSIMフリースマートフォンはauの回線とは相性がよくありません。現存するほとんどのSIMフリースマートフォンはauの回線では利用できないと言っても良いほどです。その理由はauが3Gの通信・通話に「CDMA2000」というマイナーな方式を使っているため、スマホ側がこの方式で利用できずに通話が出来ないものばかりになってしまいした。例外的に使えるのは国内で発売されているSIMフリーのiPhoneくらいです。
一方でLTEでのデータ通信に関しては一部の周波数帯が他のキャリアでも普通に使われる仕様も採用しているため、データ通信に限れば部分的に動作するスマートフォンもあります。auの回線で使いたい場合は大人しくau向けに作られたスマホを使うのが良いです。auでしか使えませんが、それだけ安く買えるということでもありますので。
今回はこのくらいにしておきましょう。SIMフリー・SIMロック解除には日本独特の事情があり、いろいろと込み入っています。SIMフリーかどうかで価値が大きく異なりますので、端末を売買するときには少し気をつけてみてください。