スマートフォンカメラのズーム機能において、他社のトップ製品に大きく劣るiPhone 12のズーム性能をどうしても強化してみたくて、野鳥観察等にも使われるフィールドスコープ「セレストロン ハミングバード」(Hummingbird 9-27x56mm ED)をアメリカから個人輸入して買ってみたのでレビュー・評価します。
セレストロン(Celestron)はアメリカにある天体望遠鏡・双眼鏡などの大手光学機器メーカーです。日本国内ではVixen(ビクセン)が代理店としてセレストロンの製品を取り扱っています。
今回購入したHummingbird 9-27x56mm EDはビクセンにて取り扱いはありませんが(2021年1月26日時点)、アメリカのアマゾンを利用することで個人輸入が可能です。
*米アマゾンでの輸入方法は下記を参照ください。
関連記事:[2021年版]Amazon.com-アメリカのアマゾンから日本へ輸入購入する方法-アカウント登録手順
Hummingbird 9-27x56mm EDを用いて、iPhoneのズーム機能がどれくらいパワーアップするのか、実際に撮影した写真を紹介します。
Hummingbird 9-27x56mm EDの仕様
製品名 | Hummingbird 9-27x56mm ED |
ズーム倍率 | 9倍~27倍 |
対物レンズ経 | 56mm |
視野角 | 4.2°~1.9° |
1000m先視界 | 65.8m~ 29.9 m |
焦点距離 | 200mm |
レンズコーティング | フルマルチコート |
重さ | 590グラム |
サイズ | 208×127×68mm |
防水 | 対応 |
より詳しい仕様はメーカーHPを参照ください。Hummingbirdにはレンズが「ED仕様」のものと、そうではない廉価モデルがあります。
フィールドスコープ(マイクロスポッティングスコープ)は、要は単眼鏡、手持ちの小さな望遠鏡です。製品によって見える倍率や明るさ・レンズ・像の歪みなどの品質が異なります。
天体望遠鏡ほど高い倍率ではありませんが、持ち運びやすいサイズと手軽に地上のものを拡大して見るために便利な仕様となっています。
iPhoneと接続して使う場合には、以下のようにカメラ部分を固定するパーツ(別売り)を使うことで、ズームレンズ効果をプラスすることが可能です。
Hummingbird 9-27x56mm EDには、上記のようにカメラ用の三脚に取り付けられるネジ穴(1/4インチ)があります。高いズーム倍率で使う場合にはどうしても手ブレが大きくなりますので、必要に応じて三脚や雲台の利用をおすすめします。
iPhoneで月の模様をとる方法
今回、iPhone (iPhone 12 Pro Max, iPhone 12 mini)を使って月面の模様を撮影するにあたり、以下のアイテムを使いました。
・フィールドスコープ本体(Celestron Hummingbird 9-27x56mm ED )
・三脚(一般的なカメラ用のもの)
・iPhone固定用アダプタ(ANQILAFU ユニバーサルスマートフォンアダプタ)
・撮影角度の微調整用(ビクセン三脚アダプター 微動雲台 3562-01 )
・もっとズームで撮りたくて(Vixen 2倍バローレンズ31.7T 3907-00)
*最後のバローレンズは無くてもiPhoneで月面の模様を見ることは可能です(むしろ、このバローレンズでは遠方にピントが合わなくなるようです)。バローレンズを使った場合のズーム倍率の変化・見え方も作例で紹介します。
これらを組み合わせることで、iPhone12で月の模様が見えるレベルでカメラズームが出来るようになります。
Hummingbird+iPhoneのズーム性能比較
まず、歴代最高の望遠カメラを搭載したiPhone 12 Pro Maxにて、通常通り月を撮ると、以下のようになります。
iPhoneで月を撮ると、月が明るすぎ+倍率が足りないため、真っ白な丸になります。
ここに、フィールドスコープのCelestron Hummingbird 9-27x56mm EDを接続(バローレンズ無しの標準状態)してやると・・・
iPhoneでも月面の隕石跡やクレーターがあることを確認できるほどにズームアップ出来ます。
ただ、iPhoneで月を撮ろうとすると自動明るさ調整が働き、月面模様が見えないくらいに明るく調整されがちです。月面模様を見たい場合は画面をタッチして、明るさを最も暗い状態に手動で下げると見えやすくなります。
倍率の高いズームレンズを使っているため、上記の作例では若干月の輪郭に色収差(ぼんやりと滲み、黄色や青などの特定の色が強く見える)が見られますが、撮影条件を調整すれば、色収差も小さく自然な月を見ることが出来ます。
今回購入したフィールドスコープは天体望遠鏡ではありませんので、月の観察に向いている製品ではありません。iPhone12 Pro Max+スコープを利用しても、まだ月面のクレーター1つ1つを見るには倍率が足りません。
上記の写真は、ニコンのカメラ「P1000」を使って撮りました(35mm換算1700mm、トリミング)。フィールドスコープとiPhoneのセットでは撮影セッティングも面倒くさいので、単に「月の写真が撮りたい」のであればP1000を買うことをおすすめします。
Celestron Hummingbird 9-27x56mm EDのズーム性能
Celestron Hummingbirdは、月を撮るためだけのアイテムではありません(むしろ月を撮りたいなら普通の天体望遠鏡を買ったほうが良いでしょう)。
通常のiPhoneズーム撮影も、おそろしく画質をアップ出来ます。
次の作例は、4メートルほど離れた位置から原寸大のネコの人形をiPhone12 Pro Maxとハミングバードスコープで撮影したものです。
(9倍ズーム時)
Celestron Hummingbird 9-27x56mm EDでは、最短3メートル先くらいからピントが合います。最も近い距離で観察すると、ネコ1匹の体が入るかどうかという視界の広さです。
Celestron Hummingbird 9-27x56mm EDのズームダイアルを回すと27倍にまでズーム出来ます。
(27倍ズーム時)
上記が27倍状態です。ネコの体全体はもはや入らず、胴体半分くらいをアップで観察出来ます。
9倍→27倍へズームアップさせると見かけの明るさがかなり減りますが、高感度なiPhoneのカメラ機能と合わせれば室内のライトで十分撮影が可能です。
フィールドスコープを使って倍率を高めた場合と、iPhone 12 Pro Maxのみの最大ズームの画質を比べてみましょう。
上記は左側がフィールドスコープ使用時、右側がiPhone 12 Pro Maxの最大ズーム(12倍)から同じ部分を切り出したものです。フィールドスコープを使えば、ネコの毛並みまでくっきりと見えます。
バローレンズで更にズームアップ
Celestron Hummingbird 9-27x56mm EDでは、接眼レンズ(アイピース)部分を取り外して、天体望遠鏡用などと同じ規格(1.25インチ・31.7mm)のパーツに交換することが出来ます。
接眼レンズの種類によって、より広いエリアを見える・より大きく拡大して見えるようにすることも可能です。
1.25インチ・31.7mmのアイピースは多くの天体望遠鏡メーカーが作っており、同じ規格ならメーカーが違っても接続することが出来ます。
今回はお試しで、ビクセンのバローレンズ(2倍)を買ってみました。
上記のように、初期のアイピースを引き抜いて、バローレンズを間に挿入して使います。
これを用いて、3メートルほど先に置いた大きさ5センチほどの人形を撮ってみました。まずはバローレンズを使わない、通常状態の見え方です。
次いでバローレンズを装着・最小ズームの状態にします。
これで、バローレンズ2倍×フィールドスコープ9倍=18倍相当です。明らかにバローレンズ無し→有りで大きく人形が見えるようになりました。
さらにズームリングを回して、バローレンズ2倍×フィールドスコープ27倍=54倍相当になりました。もう小さな人形の一部しか視界に入らないほどの超ズーム状態です。
バローレンズを使うことで簡単に倍率アップをすることが可能であり、今回利用したビクセンの低価格な製品でも、そこそこ鮮明な像を見ることが出来ました(中央以外は若干の歪み、劣化が感じられます)。視界が狭くなるのはズーム倍率をアップさせる代償として仕方のないところです(また、焦点距離が変わるため、ピントが合う距離も変わります)。
ただし、このバローレンズを入れてズーム状態にすると、視界の明るさが大きく減じられます。今回の撮影ではLEDライトで人形を照らしている+iPhone12によるナイトモード動作のため最大倍率でも見えていますが、明るい室内が薄暗い部屋になる、くらいの感じで光量が減ります。屋外で晴れた状態ならば使えると思いますが、曇り空・夜の利用だと、見える対象は限られます。
☆「アメリカアマゾン-Celestron Hummingbird 9-27x56mm ED Micro Spotting Scope」
*日本のアマゾンアカウントではアメリカ版アマゾンから商品を買うことは出来ません。別途アカウントを作り直す必要がありますので、詳しくは「米アマゾン個人輸入方法・アカウント制作手順」を参照ください。