iPhoneやスマートフォンのメーカーホームページやカタログを見ると、水に対する保護性能を表す記号として「IPX○」や「IP68」といった、英文字と数字の組み合わせで表現されています。
スマホや電化製品には水が掛かっても大丈夫なのか、あるいはすぐに壊れてしまうのかの基準には、国際的に定められた規定である「防水等級」というものが存在します。
ここではこの「スマホの防水等級」の意味や種類、評価方法などを詳しく解説します。
iPhoneやスマートフォンなどの防水に対する性能は国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)で決められた「IP」(International Protection)のコードで表現されます。
日本国内においては日本工業規格(JIS)の「電気機械器具の外郭による保護等級として防水や防塵の程度についての規定」(JIS C 0920)として定められており、メーカーが利用した保護性能の評価方法によって、テストの内容が一部異なります。
例えば、アップルのiPhoneの防水規格として使われているのは前述の「IEC」(国際電気標準会議)で定められた”IEC 60529 に基づく”等級表示がされています。
スマートフォンの防水に対する規格を正しく理解して、iPhoneやスマホを安全に利用しましょう。
防水性能を表す2つの書き方
一般的にスマートフォンの防水性能を表記する方法として、メーカーによって2種類の方法「防水+防塵性能を表す書き方」と「防水性能のみを表す書き方」があります。
まず、「防水と防塵の両方を1つのコードで表記する」場合には、「IP○▲」というIP+2桁の数字で示されています。
”IP”に続く1つ目の数字は、防塵等級を表しています。そして2つ目の数字が防水等級です。(例:「IP53」であれば、”5”が防塵等級で”3”が防水等級)。
一方で、「防水性能と防塵性能を別々に書く」場合には、防水等級を”IPX○”、防塵等級を”IP▲X”と表示します(例:「IP53」を別々に書くと、防塵等級は”IP5X”、防水等級は”IPX3”になります)。
この2種類の書き方は、メーカーやカタログによってどちらを採用するか異なっていますが、防水・防塵の性能自体はメーカーが違っていても同じIECやJIS規格の等級区分によって決まる数字が使われていますので、同じように防水性能を評価・比較出来ます。
なお、防水の規格について2種類のコードが書かれている場合もあります。これは防水規格の異なるテストで複数の項目に準拠していることを表しています(例えば「水没」に対する強さと、「水流」に対する強さのそれぞれを表記する場合)。
防水性能の保護等級と意味
スマートフォンの防水性能を表す「IPX○」や「IP○▲」の、それぞれの意味を解説します。
防水性能評価に対しては「0」~「8」までの9段階があり、基本的には数字が大きいほうが防水が高い傾向にあります。
防水等級(IPX○) | 意味 |
0 | 保護無し |
1 | 鉛直に落下する水滴に対して保護する |
2 | 15度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対して保護する |
3 | 散水 (spraying water) に対して保護する |
4 | 水の飛まつ (splashing water) に対して保護する |
5 | 噴流 (water jet) に対して保護する |
6 | 暴噴流 (powerfull jet) に対して保護する |
7 | 水に浸しても影響がないように保護する |
8 | 潜水状態での使用に対して保護する |
(JIS規格 – C0920より抜粋・引用- 参照 https://kikakurui.com/c0/C0920-2003-01.html)
それぞれの防水性能をよりわかりやすく表現してみると、
IPX0:防水性能が一切無い
IPX1:スマホの真上からポタポタと落ちる水滴なら大丈夫
IPX2:弱い雨のような、少し角度がある水滴が落ちてきても大丈夫
IPX3:スマホに対してシャワーを急角度(60°)でかけても大丈夫
IPX4:スマホに対してシャワーをどの角度でかけても大丈夫
IPX5:スマホにホースでドバドバと水をかけても大丈夫
IPX6:スマホにホースですごい勢いの水をかけても大丈夫
IPX7:スマホをゆっくりと水中に入れても壊れない
IPX8:スマホを水中で使える(上記IPX7より厳しい条件で、水に対して保護性能がある)
こんな感じです。最後の「IPX8」(防塵と合わせて書く場合は「IP○8」)はメーカーや業者が定めた規格で、IPX7よりも強い防水性能がある場合に使われます。
ちなみに、この防水等級の規格はスマホ・iPhoneだけのものでなく、「電気機械器具」に分類される工業製品で採用されています。IPコードの意味を覚えておけば、例えばイヤホンなどの防水性能がどのくらいあるのかを同様に確認出来ます。
*上記はあくまでイメージであって、実際に雨やシャワーなどに当てても絶対に壊れないという意味ではありません。規格実験は特定の高さ・水量・水流強度・深さなどの常温・真水で行われています。
iPhoneの場合は、同じ「IP68」(防水性能等級は”8”)であっても、iPhone 12シリーズとiPhone 11シリーズでテスト内容が変わっています。
モデル | 防水防塵等級 | 浸水テスト内容 |
iPhone12シリーズ | IP68 | 深さ6m, 最長30分 |
iPhone 11 Pro | IP68 | 深さ4m, 最長30分 |
iPhone 11/XS | IP68 | 深さ2m, 最長30分 |
このように、「防水等級7」より厳しい条件に対して「8」より上の数字は存在せず、全部「防水等級8」で表されます。
防水性能に対して自信があるメーカーは、上記のアップル iPhoneのように特定の条件でテストした内容を公開していることもあるため、気になる場合はメーカーの機種紹介ページをチェックしてみましょう。
参考:歴代iPhoneの防水性能一覧
モデル | 防水防塵等級/(深さ) |
iPhone 12 | IP68 / 6メートル |
iPhone 12 Pro | IP68 / 6メートル |
iPhone 12 Pro Max | IP68 / 6メートル |
iPhone 12 mini | IP68 / 6メートル |
iPhone 11 Pro Max | IP68 / 4メートル |
iPhone 11 Pro | IP68 / 4メートル |
iPhone 11 | IP68 / 2メートル |
iPhone XS | IP68/ 2メートル |
iPhone XS Max | IP68/ 2メートル |
iPhone SE (第2世代) | IP67/ 1メートル |
iPhone XR | IP67/ 1メートル |
iPhone X | IP67/ 1メートル |
iPhone 8 | IP67/ 1メートル |
iPhone 8 Plus | IP67/ 1メートル |
iPhone 7 | IP67/ 1メートル |
iPhone 7 Plus | IP67/ 1メートル |
AppleのiPhoneシリーズでは、iPhone 7以降(2016年発売)以降のモデルは防水防塵性能があります。新型ほど防水に対する性能はアップしており、頑丈になってきています。
しかし、iPhoneは水濡れで壊れても、保証の対象外です。
「防水性能がある=水に濡れても絶対壊れない」ではない
上記で解説したとおり、多くのスマートフォンやiPhoneがIEC/JIS規格で定められた防水等級・防塵等級を表示しています。
しかし、防水等級が最も高い「IPX8」であっても、日常生活で水に濡れても絶対に壊れない・壊れても保証がある、という意味では有りません。
IECによるコード表記では「IPX8は水中で利用が出来る」という書き方をする場合もありますが、スマホを水に沈めて通話をしたりカメラ撮影を自由に使っても壊れない、というわけではありません。前述のiPhoneの例でも、「1~6メートルの水中で、最大30分経過しても機能を損なわない」というテストをしているというだけであって、水中での常用が想定されているわけではないのです。
iPhoneシリーズの場合、新しい機種で防水等級が高いモデルなら、ジュース・お茶・コーヒー・炭酸水などをこぼしてしまっても、簡単には壊れません。
アップルのサイトにも、以下のような記述があります。
iPhone 12、iPhone 12 mini、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、iPhone SE (第 2 世代)、iPhone 11、iPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Max、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR は、ソーダ、ビール、コーヒー、紅茶、ジュースなど、一般的な飲み物を誤ってこぼしてしまっても耐性があります。液体をこぼしてしまったら、その部分を水道水ですすいでから、iPhone を拭いて乾かしてください。
防水等級のテストは常温の真水でテストされていますが、実際にはある程度、不純物が混じったものや温度が高い/低い場合でも、スマホの機能が損傷される可能性は低いでしょう。
iPhoneはお風呂に落としても大丈夫?
最新のiPhoneでは防水に対する性能がアップしています。しかし「壊れる可能性が低い」だけで、絶対に壊れないわけではありません。
前述の「IP68」でテストされている規格は常温の水にゆっくりと静置した場合です。
常温ではないお風呂の湯船に、勢いよく落とすような状況は想定されておらず、iPhoneをお風呂で使うのは危険です(特に充電しながら使うと重大な事故を引き起こす可能性があるため、絶対にケーブル等を挿したまま水場で使わないようにしましょう)。
防沫性能、耐水性能、防塵性能は永続的に維持されるものではなく、通常の使用によって耐性が低下する可能性があります。水濡れによる損傷は、保証の対象外となります-アップル公式ヘルプより
スマートフォン・iPhoneの日常的な利用によって防水に対する性能が劣化することもあり、水濡れは通常保証の対象外です。
実際には、iPhoneやスマホをお風呂で使ってしまっている、使っているけれど特に故障したことはない、という人もいらっしゃるでしょう(管理人もそうですけれど・・・)。しかし、お風呂でiPhoneを使うことは「防水性能」で規定されている等級ではなく、「防水のiPhoneをお風呂で使っていい」ということではないことを理解しておかなくてはなりません。
iPhone・スマホが防水対応であっても過信せず、出来る限り水に濡らさない・水がついた場合は素早く柔らかい布なので水分を拭き取り、乾くまで利用しない(特に充電には注意)ように気をつけて下さい。
スマホの水没に対する保険オプション
水濡れ、水没でスマホを壊したことがあるユーザーは、スマホ用の保険サービスに加入すれば水没でも補償が受けられるようになります。