2022年、日本でも正式に販売されているARグラス(メガネ型ディスプレイモニター)のRokid Airを購入・PS5と接続してプレイしてみましたのでレビューをします。
Rokid Airは2022年にクラウドファンディングプロジェクトから登場した超小型のポータブルメガネデバイスとして、2022年5月頃から一般販売も行われています。
管理人は別途Meta(旧Facebook)の「Oculus Quest2(Meta Quest)」やスマホを装着するタイプのVRゴーグル機種も各種利用経験がありますが、”ARグラス”タイプの製品は初体験です。
未来感のあるRokid Airですが、実際に個人用としてどんな使い方が出来るのか、使い勝手・実用性を評価していきます。
Rokid Airの概要
Rokid Airは「ARグラス」に分類されるデバイスであり、要は「メガネ型のモニター」です。ぱっと見の外観はサングラスのようなデザインです。
Rokid Air自体にパソコンやスマートフォンのようなシステム(OS)が組み込まれているのではなく、対応するスマホ・パソコン・タブレット端末などの画面を(外部モニターとして)出力させるための機器です。
メガネのそれぞれのレンズ上に極小のディスプレイパネルが埋め込まれており、これをレンズを通して90度屈折させ、目の前に半透明な状態で表示させることが出来るというギミックです。
対応したケーブルあるいはアプリを利用すれば、iPhone・Androidスマートフォン各種、パソコンやゲーム機器などのさまざまなデバイスの画面をRokid Airに表示させる事ができます(接続の方法は複数あります。詳細は後述)。
VRゴーグルのように目の周り全体を覆ってしまうこと無く、軽量でお手軽に使えることがRokid Airの魅力です。
では、もっと細かくRokid Airの仕様や使い勝手について感じたことを書いていきましょう。
Rokid Airのスペック・仕様
Rokid Airの主な仕様は以下のとおりです。
ディスプレイサイズ | 120インチ相当 (数m離れた位置からみた比較) |
視野角 | 43° |
ディスプレイ輝度 | 1800Nits |
スピーカー | HD指向性スピーカー(2個) |
解像度 | フルHD デュアルディスプレイ |
リフレッシュレート | 75Hz |
本体重量 | 85グラム |
ピント調整 | 左右個別に可能(近視 -5.00D以下) |
メガネ併用 | ▲(メガネ製品による) 視力補正レンズなどは無し |
接続 | Type-C USB |
バッテリー | ☓(充電式ではない) |
価格 | 69,800円 |
*日本モデルの場合。価格はVANLINKS SHOPの定価。
☆「アマゾン – Rokid Air (ARグラス)」
☆「楽天市場 Rokid Air」/2023年7月19日時点、29,800円に値下げ
Rokid Airのデザイン・装着感
Rokid Airは「極小のARグラス」というウリ文句であるとおり、軽く、装着感のよいアイテムになっています。
VRゴーグルのように目の周り全体を覆って装着するのではなく、本当に「眼鏡をかける」感覚で使えます。
本体重量は実測で82グラム。もちろん普通のメガネに比べれば重さを感じるものの、長時間つけていても負担になりにくい重さです。
付属のハードケースを使えば手軽に持ち運ぶことも出来るため、まさに「どこでも目の前にモニター表示出来るメガネデバイス」という印象です。
Rokid Airの接続方法・利用方法
Rokid Airの機能は「外部モニター」です。Rokid Airはさまざまなデバイスとの接続を前提とした出力方法が用意されています。
Rokid Airの接続方法は主に4つあります。
①ワイヤレスアダプターを使う(Wi-Fiスクリーン投影)
②Rokid Airアプリを介して表示(Display Port)
③HDMI-Type-Cケーブルを使う
④Type-C Display Port経由で表示
どの方法が使えるかは、スマートフォンの機種/メーカー/OSなどに依存します。iPhone(iOS11以降)の場合は「Rokid Wi-Fiアダプター」(別売り/日本価格12,800円)を使って表示出来ます。
新しいGalaxyスマートフォンの場合なら、Dexモードを使ってスマホ→Rokid AirをType-Cケーブルで繋ぐだけでも利用できます(Galaxy Note 20 Ultra/Galaxy S22 Ultraで確認)。
HDMIケーブルが使えるパソコン・PS5の場合には、対応したHDMI-Type-Cのアダプタを経由すれば使えます。
上記はUGREENというメーカーのHDMI-Type-C変換ケーブル(日本では「Rokid HDMIアダプタ」として別売り4,800円)です。HDMIで画面を出力+micro USBで給電を同時に行うことでRokid Airへ投影が出来ます。Rokid Airに給電しながらでないと表示できないため、実際に使う場合は2~3mくらいの長めなmicro USBケーブルがあると便利でしょう。
Rokid Airの見やすさ/使い勝手/実用性評価
Rokid Airは「120インチ相当の大画面」というアピールをしていますが、これは”目の前に120インチ”ではない表現に注意が必要です。
120インチという表現は「数メートル離れた位置から」とされているように、一般的なパソコンモニターで操作するときのような「数十センチ」の距離からみた比較ではありません。
見え方には個人差も若干あるため表現が難しいのですけれど、例えば「80センチ離れた場所に置いた23インチ(横幅50センチ)のモニター」くらいのサイズです(管理人がRokid Airを装着しながら、PCモニターと同じサイズに重なるように離れて実測した見た目の大きさ)。
Rokid Airに搭載されたフルHD解像度のディスプレイは、たしかにかなり綺麗です。しかし、パソコン画面などをそのまま(普段どおりの文字サイズで)投影した場合は、細かい文字が見づらいサイズに小さく感じられました。設定によって文字サイズ・表示サイズ自体を変更すればそれなりに使えます。
VRゴーグルのように密閉感がなく軽く、背景もそれなりに見えるため、長時間つけっぱなしで利用することは可能です。
Rokid Airのディスプレイはレンズを介して半透明な状態で見えます。周囲が明るい場所(室内)でもそれなりに視認性はあります。ただし、はっきりと見たい場合には部屋を真っ暗にしたほうが良いです。周囲が暗ければ本当に目の前にモニターがあるような、色鮮やかで明瞭な表示が楽しめます。
一方で、スマホ・パソコンの画面をそのまま表示してしまうと、多くのアプリ・ツール・システムは文字が小さく、操作が困難に感じました。個人的には「Rokid Airを日常のパソコン作業のモニター代わりに使えるか?」と問われたら、「100%ムリ」というレベルです。文字やコンテンツサイズを変更できないゲームのプレイもちょっと難しいでしょう。
PS5と接続する場合は、PCと同じくHDMI-Type-C USBアダプタを経由してRokid Air上にPS5の画面を表示させることが可能で、サウンド再生も可能でした。Rokid AirのディスプレイはフルHD相当・リフレッシュレートも75Hzとまずまず高いため、レースゲームも十分快適に遊ぶことが出来ます。
普通のパソコンモニター+ARグラスをサブモニターのように2重表示させて使いたいという場合にも、はっきり言って実用性は低いです。通常のPCモニターに複数ウィンドウを立ち上げておくほうが、操作性でも見やすさでも絶対に快適ですから。
Youtubeやアマゾンプライムビデオなど、動画コンテンツを楽しむだけなら”大迫力”とは言えずとも、十分に内容を楽しめるレベルで綺麗に見えました。仰向けに寝たまま画面が正面に見えるという体験は、たしかに楽です。
ただ、Rokid Airは給電が必要ですので”フルワイヤレス”にはならず、ケーブル接続の影響でどうしても有線の限界・移動制限が出てきます。ARグラスをつけたまま歩いたり、日常生活を行うのは困難であり、実用性があるレベルではありません。
鼻にあたるパッドはシリコン系素材で出来ており、指でグイっと押し広げる/縮めることで角度調整可能です(メガネの”高さ”やレンズ間隔は調整不可)。
Rokid Airでは近視ユーザー向けに、見た目のピント合わせを調整できる機能があります。ただ、遠視・乱視に合わせることは出来ないため、目が悪い人は注意が必要です。通常の視力矯正用メガネと併用(メガネの上にRokid Airをつける)する前提のデザインではなく、メガネ用アタッチメントなどもありませんので、「メガネの上からつけたい」場合は、メガネ側のデザインに依存して利用可否が変わります。
オン眼鏡で使う場合、目とレンズの距離が変わってしまうため、ピントが合わない・スクリーンの縁が大きく歪んで見える場合があります。眼鏡必須の利用者は、ヤマダ電機(池袋・なんば・高崎)・ヨドバシ(アキバ・梅田)などに実機展示で確認することを推奨します(在庫の有無・試用可否は各店にお問い合わせください)。
Rokid Airのオーディオ/サウンド評価
Rokid Airには眼鏡フレームのつる/レンズ横の左右に、それぞれスピーカーとマイクを積んでいます。
音質は・・・オープンタイプであることを差し引いても、微妙です。全く使えない・(通常音量の範囲なら)音割れしまくるということもないのですが、音漏れはヒドイです。公衆の場所で使う/音を重視するなら別のイヤホンを利用するほうが良いかもしれません。
Rokid Airは一般人にとって買いか?
管理人は「寝転がったまま画面が見れるなんて面白そう!」という軽い気持ちで買ってみた、Rokid Airでした。初めてのARグラスデバイス購入であったため、表示・接続方法も含めて「メガネにモニターを表示できる」という点は楽しめました。
しかし・・・はっきり言って、一般・個人利用で”Rokid Air(ARグラス)を使うメリット”が、その他のさまざまなデメリットを超えられる場合は限定的だと感じました。
大きな画面でテレビをみたい → 普通のモニターを使ったほうが安くて手軽
パソコンの操作をしたい → 普通のモニターを使ったほうが安くて手軽
サブモニターを空中に浮かせて使いたい → 普通のモニターを使ったほうが安くて手軽
スマホゲームを大画面でやりたい → スマホを顔の近くで操作したほうが大きく見える
PS5/ゲームを遊びたい → 出来なくはないが、大迫力といえるかどうかは微妙
手軽に持ち運べる大画面 → iPadやタブレットを買ったほうが安い
裸眼でも見える → 近視(5.00D以下)に限る
などなど、高額なRokid Airを買うより普通に目的のサイズのモニターを利用したほうがストレスレスです。”寝ながら画面を見る”という点に関してはたしかに他の方法ではやや実現は難しいものの、プロジェクターで天井投影/フレキシブルなモニターアームで頭上にスマホを持ってくるほうが安上がりでしょう。
Rokid AirではスマホをPCのタッチパッドのように操作することが出来るものの、Oculus Quest2のように直感的なコントロールが出来るわけではないため、”未来的な使い方”という感じではありません。表示されたAR画面をそのまま空中を手でタッチするような操作や指の動きでも追跡して(ジェスチャーをトラッキング)操作でも出来ればすごく未来的ですけれど、そんな機能はRokid Airにはありません(2052年くらいには出来るのでしょうか?)。
”AR”(Augmented Reality)=拡張現実のデバイスとして「現実の世界+モニターを同時に見る必要がある」という用途ならばRokid Airのような専用デバイスが必要になる可能性はあります。しかし、ARグラスでないと体験出来ない利用シーンに一般ユーザーはなかなか出会わないと思います。何らかの特殊なイベントや企画用としてビジネス利用ならばありえるのかもしれませんが・・・。単なるモニターとして使うなら、前述のとおり普通のモニター・ディスプレイ出力を使ったほうが楽だと感じてしまいます。
没入感のある映像を楽しむならARではなくVRデバイスのほうが相性が良いため、現時点ではOculus Quest2のように一般ユーザーが買って楽しめる機器という感じではまだないのかな?という印象でした。
Rokid Airを安く買う方法
Rokid Airは2022年8月時点において、以下のような価格で販売されています。
Rokid Air本体 | 84,000円 |
Rokid HDMIアダプタ | 4,800円 |
Rokid WiFiアダプタ | 12,800円 |
*RUTAWA DIRECTの場合。
ヤマダ電機、ヨドバシカメラでも本体は同額で売られています。
アマゾン・楽天・Yahoo!ショッピングではもう少し安く買えます(2022年8月28日時点、69,800円/VANLINKS 株式会社国内正規代理店の場合)。
☆「アマゾン – Rokid Air (ARグラス)」
☆「Yahoo!ショッピング Rokid Air」
☆「 楽天市場 Rokid Air」
アメリカのアマゾンでは399.99ドル(2022年8月11日時点)です。
ARグラスの類似品・ライバル製品
Rokid Airのような「ARグラス/メガネ型モニター」の製品は複数あります。Rokid Airはシンプルな使い勝手が魅力でしたが、コスパははっきり言ってイマイチでしたので、用途によって類似品・他社品も検討する価値があります。
製品名 | 価格 |
Nreal Air | アマゾン/45,980円 「ドコモ公式サイト-kikito」でレンタル可能 *対応機種以外には「Streaming Box」が必要 |
Lenovo Glasses T1 | 未定 |